ビジネス

夏バーゲン「本番前の優良会員限定SALE」で顧客争奪戦に号砲

 景況感の高まりから、夏のボーナス商戦に向けた流通業界の動きが慌ただしくなってきた。昨年、バーゲンセールの時期を巡って分散した百貨店。今年も「7月1日前後」の“不文律”が崩れる見込みだ。以下、主要百貨店のバーゲン開始日を見てみよう。

■6月28日/高島屋、丸井、そごう・西武、大丸松坂屋、東武など私鉄系百貨店
■7月4日/パルコ、109
■7月12日/ルミネ
■7月17日/三越伊勢丹

 今年の特徴は、バーゲンの「後ろ倒し」を貫く三越伊勢丹やルミネ以外は、ほぼ6月下旬~7月上旬と早めのスタートで歩調を合わせていること。昨年、7月の前後半2回に分けて実施した高島屋も、結局は裏目に出たために1本化。時期も元に戻した。

 また、今年は例年以上に顧客の争奪戦が早まっていると話すのは、流通コンサルタントの月泉博氏。

「来年4月の消費増税を前に、駆け込み需要を含めて1人でも多くの固定客を掴んでおきたいのが流通・小売り業界全体の認識です。特に、値の張るブランド衣料品などは、夏物にしても消費税が上がる前に買っておこうという意識が消費者の中にもある。そんな消費意欲が旺盛なうちに、手を変え品を変えてセールで稼いでいく戦略でしょう」(月泉氏)

 特定のアパレルの中には、百貨店のセール本番前にカード顧客に対して優待セールを行うところも多く、前哨戦はすでにあちこちで火花を散らしている。とあるブランドのプレセールで夏服を物色しに出掛けたという、都内在住の40代男性がいう。

「招待状に『夏のセールにさきがけて、限られたお客様だけのためのご案内を差し上げます。ご優待対象商品に限り店頭表示価格より30%OFF。店頭では一切表示のないシークレットセールですのでゆっくりと買い物をお楽しみ頂けます』なんて書いてあったので、のこのこ行ってきたのですが、セールの対象になっていたのはスーツなど単価の高いものばかり。欲しかったTシャツやジーンズなどはほとんど対象外で定価販売でした。本番のセールまで待とうかと悩んだ末、結局は買ってしまいましたが……」

 アパレル業界にとっては、こんな“オイシイ”客はいないだろう。とある大手アパレルメーカーの幹部が打ち明ける。

「ここ数年の消費低迷で、とにかくプレセールやシークレットセールなどを年中開催してリピーターを増やす戦略をとっています。そこでは型落ちや在庫の膨らんだ商品を10~30%引きで小出しにしながら、本番のセールで一気に売り、さらに残ったものを半額にする。そうやって何層にも渡ってセールを開催し、長い期間、お客さんを繋ぎとめておくのです」

 だが、前出の月泉氏は「あまりにも節操のないプレセールを繰り返せば、ブランドの信用力が落ちる」と指摘して、こう続ける。

「最近のプレセールは真のリピーターを優待する目的よりも、たくさんの『あなただけ』を短期間で囲い込みたい魂胆がミエミエ。確かにアウトレットや駅ナカ専門店など、百貨店やショッピングセンターに次ぐ第三極の台頭で、ますます売り方は難しくなっています。ただ、あまりにも安易にバーゲンを行えば、アパレルメーカーのみならず、場所貸しをしている百貨店ほか商業施設そのもののブランド価値も落ちていくでしょう」(月泉氏)

 短期的な売り上げ減は仕方ない。百貨店の役割は顧客が一番欲しいときに欠品なく商品を揃えること――。バーゲン後ろ倒しの理由をこう説明している三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長。

 奇しくも「消費税還元セール」の禁止法が成立したいま。消費者を混乱させるバーゲンのあり方自体も見直す好機なのかもしれない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン