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尺八を世界に広めた国際的名手 「慣れるまでは苦労します」

尺八を世界に広めた人間国宝・山本邦山氏

 2002年に「重要無形文化財保持者」(通称「人間国宝」)に認定された、尺八の山本邦山氏(75歳)。1967年、当時世界中のジャズメンの憧れの舞台だった「ニューポートジャズフェスティバル」に、山本氏の尺八の音色が響いた。

 その翌日、『ニューヨーク・タイムズ』が演奏の様子を大きく報じ、共演依頼が殺到した。出演のきっかけをつくり、交渉の窓口となったジャズプレーヤーの原信夫は「断わるのに苦労した」と述懐している。

 山本氏が本格的にこの道に入ったのは、9歳のときだった。だが、大学は京都の外語大。中学の教師になるつもりでいたところ、大学卒業後にパリで開かれた世界民族音楽祭に日本代表で参加。以後、邦楽の垣根を飛び越え、数々の世界的ミュージシャンと共演した。

 ジャズクラリネットの世界的プレーヤーであるトニー・スコットとの共演で制作したレコード『禅』は、ジャズと邦楽器がコラボした世界初の作品として後世に名を残した。その後も、歌手のヘレン・メリルやピアノの山下洋輔のほか、インドのシタール奏者のラビ・シャンカールなどとの共演を果たした。その歩みは、世界に向けて日本文化を発信してきた歴史といっていい。

「穴が5つあるだけの竹の筒だから簡単に見えますが、シンプルなだけに複雑な技術が必要なんです。慣れるまではなかなか音が出なくて苦労しますよ」(山本氏)

 全国に散らばる弟子は600人を数える邦楽界の巨匠。古稀を過ぎてなお視線の先にあるのは世界。目指す高みは想像を超える。

撮影■ヤナガワゴーッ!

※週刊ポスト2013年6月28日号

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