先日、東京ディズニーリゾートで食品の「誤表記」があったことが発覚した。「車海老の炒めもの」にブラックタイガー、「地鶏の串焼き」に国産鶏を使っていた。さすがに問題になったが、実は似たような手法は普通に行なわれている。
飲み屋街を歩くと、「地鶏」だの「黒豚」だのというメニュー看板がやたら目に留まる。だが“本物”は非常に少ない。「地鶏」には農水省が指定する細かい規格がある。
〈明治時代に日本にその種が存在し、その血統を50%以上引き継ぐ鶏で、飼育期間が80日以上、生後28日以降は、平飼いで1平米当たり10羽以下の飼育環境で育てられた鶏〉
この条件に合った地鶏は、比内地鶏、薩摩地鶏、名古屋コーチンなどをはじめとして、主だったもので約60種類ほど。しかし鶏肉の消費量全体で見れば、実に1%程度しかない。食品問題に詳しいジャーナリスト・郡司和夫氏の話。
「本物の地鶏は生産コストが高いため、ほとんどが専門店や高級料亭に納まり、大衆居酒屋に流れることはまずありません。地鶏だと思って食べているものでも、本当は“銘柄鶏”という可能性がある。ブロイラーと地鶏の中間種で、地鶏とは別物です。酷いところではブロイラーを地鶏と謳っているところがあると聞きます」
しかし罰則規定があるわけではないため、ほぼ無法地帯と化している。味付けや提供方法次第では、その差を感じるのも難しい。
「黒豚」も同様だ。黒豚と呼べるのは、英国原産のバークシャー種同士の交配から生まれた純粋種だけ。本物の黒豚は、流通量全体の数%に過ぎない。しかし、「豚肉はカットされると、プロでも見分けがつかなくなる」(郡司氏)
※週刊ポスト2013年6月28日号