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芸歴15年超芸人3人が「臭っても愛されるおじさん論」を語る

左からサンキュータツオ、マキタスポーツ、プチ鹿島

 いずれも芸歴15年を超える“おじさん”芸人のマキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオが喋り続けるラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ系列)が評判を呼んでいる。7月8日(月)には赤坂BLITZでイベント「オレたちと赤坂と東京ポッド許可局~屁理屈ブリッツ~」も開催される。番組で話されるテーマは「●●論」としてタイトルがつけられ、その内容はオオカミから「あまちゃん」まで多岐にわたる。集まったら「論」ぜずにはいられない3人に、番組のように“おじさん”人気が高まっているのかをきいてみた。

 * * *
プチ鹿島(以下PK):そういえば、おじさんを集めた本が出ていましたね。(※「おじさん図鑑」(小学館)、「おじさん画報」(学研パブリッシング)など書籍が多数出版されている)

サンキュータツオ(以下タツオ):アニメだと『TIGER&BUNNY』が一昨年にヒットして、可愛いおじさんは少しブームになりましたが。おじさんを愛でる文化というのは、確かに日本にはあると思うけど。

マキタスポーツ(以下マキタ):オレはいま、この中でおじさんとして一番、可愛がられていると思いますよ。でも、一人でいると憎まれるんです。タツオもたぶんそうだし、PKさんも怖い(笑)。

PK:怖いと言われないように直したい。でも、面倒くさいんだったら俺は一人でいい。仕事でも、たとえば誰かにライブを手伝ってくれと言えないんです。お兄ちゃん気質なのかな。本当は甘えたいのにできないですね。

マキタ:そして、一人で大丈夫な人になる。PKさんがやっていることは、臭いって言われる前に、いいニオイにしておくということですよ。

PK:今は誰もがいいニオイにしたがるし、臭う距離感もなるべく持たない。でも、雨にぬれた汚れた犬がずんずん近づいてきたら止めてくれと思うけど可愛い。怒られてもそばへ行くのが可愛いんですよ。今は近づかない人ばかり。でも、近づく人に憧れますよね。

マキタ:臭いを感じない距離を保ち、もし感じる距離だったらデオドラントするのが今のマナーなんでしょうけど、本当は臭いがじかにぶつかるところで通じる何かがある。僕ら3人の臭いは混ざってるでしょうねえ。加齢臭しかしないだろうけど(笑)

PK:3人が混ざると変わるんですよ。喋るのも1人ずつだと強すぎて怖いのが、3人になるとイラっとくる前に誰かがさえぎる。そこで消化されるから、憎まれがちな3人が集まると転じて面白いし、可愛らしく見える。

マキタ:男って体裁があるから、自分が言いたいことをむき出しにすることがない。だけど唯一、この3人で話すときはジェンダーを超えた感じでやっている。そこが可愛らしく見えるのかもしれない。僕は最近、この3人は“三つ子のオカマ”だと言ってるんです。

タツオ:「相変わらずブスね」「何よ、この女」とぶつけあうオカマの会話みたいなもんです。

マキタ:だから、番組でしゃべるテーマを「論」と言っていることはトリックなんです。実際は論でも何でもなく、まとまっていない。一人ならそれなりにまとめて話せますよ。でも、この3人がそれぞれ好きに喋るから、論をまとめるより喋ることが優先になる。

PK:「論」と言いつつ本当は会話だから、違うよ!と自分も参加したくなる。

タツオ:放送を聞きながら、鹿島違う、マキタ違う、タツオ違う! てイライラしている人の方が多いかも。

マキタ: 3人で喋っているときの夢中な感じを“シズル感”と僕は呼んでいるんです。シズル感とは、CM業界でビールの泡や肉が焼けるときの脂の散り具合など美味しそうに見せることを言うんですけど、僕らが「論」に夢中になっているときの会話の力はそういう泡や汗のようなもの。

タツオ:だからそのシズル感を感じて、ラジオでも、後日のポッドキャストでもイベントでも僕らの仲間に入りたいな、と思ってもらえればいいですけどね。

マキタ:僕らは三者三様なんですよ。育ってきた環境も違い、各々の活動もしている。でも、結集した仲間のバディ感がすごくいいと思うんです。3人のおじさんが集まって、こんなにかしましいかと。こういうサンプルケースは、おじさんが可愛く見えるんだという一つの実験だったのかもしれません。

タツオ:面白いと思われているものの幅はもっとあってもいいでしょというメッセージを番組やイベントから受け取ってもらえるといいかなあ。オチに向かって無駄なく最短距離をいくものだけではなく、寄り道の面白さを感じてほしい。みんな美味しい料理を食べるけど、料理をつくっているプロセスを見る楽しみというものもある。

マキタ:見える広告代理店を実践しているしね。

タツオ:この番組はスポンサーがないので、イベントで売り上げを出して運営していくほかないんです。だからやっていることは小さい企業のようなもの。そのプロジェクトの進み具合もすべて明らかにしているんです。

マキタ:僕らはAKBをプロデュースする秋元康さんのようでもあり、当のアイドルでもある。でも、作り手としては秋元さんよりもずっと興奮しているかもしれない。

タツオ:皆が総監督の“たかみな”(=高橋みなみ)っていうこと?

PK:7月8日のイベントに関しては“たかみな”かもしれない。4月に番組が始まる時からイベントで番組制作費をねん出すると決まっていたし。

タツオ:それならグッズ買ってくれた人には握手会をやらないと。「会いに行けるおじさん」と言ってるんだから。

マキタ:さんざんカーテンコールなんてクソだと言ってきた俺らが握手会やるってどういうことだよ(笑)。でも、これが逆フリになって握手会をすることになるかもしれないけど(笑)

タツオ:握手会はわからないけれど、イベントでは歌を歌って登場します。

PK:お客さんを目の前にするイベントならではのことをしますよ。この3カ月のアングルをきかせた集大成になる、プロレスのビッグマッチのようなものだと思ってください。集大成の「論」が行われ、点が線になるのは確かです。伝説になりますよ。

■東京ポッド許可局はTBSラジオ系列で毎週金曜28時~29時に放送中。出演者は●マキタスポーツ 1970年生まれ。山梨県出身。芸人・ミュージシャン・俳優・コラムニスト。今年晩夏にスピードスターレコーズからメジャーデビュー決定。『苦役列車』の演技で第55回ブルーリボン賞新人賞受賞。著書に「一億総ツッコミ時代」(星海社)●プチ鹿島(ぷち かしま)1970年生まれ。長野県出身。157センチ。時事ネタと見立てが得意。2012年より単独イベント「プチ鹿島○月号」を新宿レフカダで不定期開催。著書に「うそ社説2~パンダの生活が第一を旗揚げせよ」(オンデマンド)●サンキュータツオ 1976年生まれ。東京都出身。お笑いコンビ「米粒写経」のツッコミ。一橋大学非常勤講師もつとめる日本初の学者芸人。得意ジャンルはアニメ、BL、面白論文、落語など。紫の人。著書に「国語辞典の選び方」(角川学芸出版)

■撮影/山崎力夫

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