「酒の品揃えが納得できるし、カウンターにずらっとうまい料理が並んでると幸せになるんです。これ、大将と美人の奥さん(友紀さん)とふたりでぜーんぶ手作りなんだそうですよ」(40代、運送業)
そう、これが大きな理由なのだ。店内に貼られているつまみのお品書きは、おばけ(さらし鯨)、まぐろのお造り、焼きとり、おでんなど40品ほど。
「肉や魚のプロに教わり、よその店に顔を出してヒントをもらって、自分なりに研究してます。裏メニューも入れて、今は50種類ぐらい作ってるかな。きりはないけど、下ごしらえにも力を入れていて、朝早くからとにかく手間をかけてる。だからといって、その手間を価格に乗せたりはしないです。それじゃ、お客さん喜ばないもの」(中島さん)
おばけにかかる酢味噌、串かつにつけるソース、そういったものにまで、常連客の評判が高い。酒屋としての創業は終戦後すぐだという。
「もともとは戦前に祖父母が始めた米屋。昭和20年頃に立ち飲みもできる酒屋になって、やがて製麺業も始めたんですね。ここから北へ歩いて1~2分の所から、この場所に移ったのが8年ほど前になります」(中島さん)
だから、南店。
「10年前から通ってるんだけど、ある日突然店が消えたんだよ。あの悲しさったらなかったね。でも、3年ぐらい経ったころにここで見つけた。あのときのうれしさったらなかったね。この気持ち、わかりますか。今は、この丸テーブルでいつも飲んでます。自分たちだけで飲める場所を確保できるんで、すごく気に入っているんですよ」(40代、燃料関係)