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アベノミクス第3の矢 具体策カラで大きい数字だけ飛び出す

 6月14日に閣議決定された日本再興戦略は、いわゆるアベノミクスの「第3の矢」だが、あまりにもひどい内容だった。

 まず全体を見ても、随所で「目標」「目指す」と威勢はいいが、具体策はカラッポと言っても過言ではない貧弱さ。そのくせ大きい数字がポンポン飛び出す。

 例えば、次世代インフラは現在2兆円の市場が、わずか7年後の2020年に16兆円と8倍増になり、2030年には33兆円と、また倍増するのだというが、そのための具体策はというと、〈インフラ長寿命化基本計画の策定等を活用したインフラ点検・診断システムの構築、新素材の開発、宇宙インフラの整備・活用などを実施〉〈安全運転支援システム、自動走行システムの開発・環境整備、車両関連ビッグデータによる情報サービス環境の整備、物流システムの高度化などを実施〉という典型的な役人の作文だけ。

 話題のテーマを並べて“すべて頑張ります”という総花的な宣言で何兆円も何十兆円も儲かるなら民間企業がとっくにやっている。

 要するに大きい数字を出すことが目的のようで、日本政府が頑張ってどうにかなる問題でもないのに世界市場の怪しげな予測までが〈目標〉に掲げられ、例えば、農業・食料の世界市場規模は2020年に現在の2倍の680兆円になるとされている。

 その間の世界人口の増加予測はせいぜい10%程度だから、世界中の人たちが急に食事を2倍に増やすのだろうか。それとも食料価格が7年で2倍になるという恐怖の未来を〈目標〉にしているのか。ともかく、それによって日本の関連産業は現在より20兆円も売り上げを伸ばすというから驚きである。

 注目のTPP(環太平洋経済連携協定)関連では、自由貿易協定を結んだ相手国との貿易を全体の70%まで引き上げる(現在は19%)という、これまた高い目標を掲げるのだが、なぜその数字が必要なのか説明はない。ちなみにこの自由貿易比率はアメリカでも38%、日本よりはるかに外需依存度が高い韓国で35%。世界の“自由貿易度”はその程度である。

 それで日本が世界に先駆して発展するというならまだわかるが、政府の予測ではTPP参加による経済成長は「10年後に実質GDPで3.2兆円」ぽっちなのである。

 そうして羅列された根拠薄弱な数字をすべて積み上げると、2020年頃のGDPは現在より80兆円程度増えることになるらしいが、たとえ千歩譲ってそれらの数字が正しいとしても、これでは安倍政権が掲げる年率3%成長には遠く及ばない。3%成長なら、2020年にはGDPは現在より130兆円増えて600兆円に達しなければならないはずだ。

※SAPIO2013年8月号

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