国内

落合信彦氏 ネットで政治話題活発化も人種差別的主張は残念

 参議院選挙が近づいているが、若者たちの投票率は低く、彼らは本当に政治に興味を持っていないのだろうか。日本の閉塞状況を打ち破るためにも若者の政治参加は必要だ。作家の落合信彦氏がそんな若者たちに提言する。

 * * *
 私が危惧するのは、日本の若者がどこか冷めているように見える点だ。政治や社会問題について友人と熱く議論する姿がほとんど見られない。私はアメリカにいた時に、ジョン・F・ケネディの弟で、人種差別撤廃を掲げて凶弾に斃れたロバート・“ボビー”・ケネディに激しく心揺さぶられたことがあるが、仮にボビーのような人間が現われた時、昔と同じような熱狂は湧き起こるだろうか。

 日本にはとても優秀な若者が数多くいる。ただ、軋轢や衝突を過度に恐れているように見えるのも事実だ。私はアメリカで過ごした学生時代に言葉を学びながら政治や文学、歴史について友人たちと何時間も語り合った。

 激しい口調でやり合うこともあったが、むしろそうした議論を通じて多くの新たな友人を得た。相手を尊敬しながら意見をぶつけ合えば、新たな発見があるし自分の考えを深めることにもつながる。本当の議論とはそういうものだ。投票率が上がらないことと議論を忌避する姿勢には関連があるように思えてならない。

 日本の若者が政治にまったく関心がないとは思わない。インターネットを見れば政治的な事柄についての書き込みも数多くある。残念なのは、特に最近はその多くが人種差別的な考えに基づいた主張であることだ。ボビーの掲げた理想と対極の言論がネット空間には溢れている。

 確かに一分の真実はあるかもしれないが、もう少し洗練された言葉や文章で表現できないものか。こうした主張は、顔と顔と突き合わせて議論していく中で形づくられたものではない。目の前の人間と議論していれば、自然と相手の痛みや悩みを感じ取れるようになる。恥知らずでただただ攻撃的なだけの主張などできないはずなのだ。

 ネット上での罵り合いではなく、信頼できる友人と有意義なディスカッションができれば、政治への前向きな関心も高まっていくのではないだろうか。

 未来は与えられるものではなく、勝ち取るものだ。民主主義国家においては勝ち取るための重要な手段の一つが選挙である。冷めた目で選挙戦を見るだけでなく、理想の国家とはどうあるべきかを友人と熱く語り合い、投票所に足を運んでもらいたい。

 魅力を感じる候補者がいなければ白票を投じてもいい。棄権するよりはるかに意義ある行動だ。何らかの意思表明をしなければ、現実は決して変わらない。若者が動けば、この国の未来は変わる。自分たちの「一票の力」をどうか軽く見ないでもらいたい。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン