ビジネス

日本人はプレゼンが苦手な人多い パワポに頼っていてはダメ

 世界で「プレゼンテーション」のブームが続いているが、日本人にはプレゼン苦手な人が多い。プレゼンが苦手な人は、何を見落としているのかについて、大前研一氏が解説する。

 * * *
 もともと日本にはプレゼンが苦手な人が多い。理由は「うまく伝わらない」「納得してもらえない」といったことである。なぜそうなるのか? 律儀に何でもかんでも詳しく説明しようとするからだ。

 プレゼンのツールは、今やパワーポイントが主流だが、ひと昔前はスライド映写機やOHP(オーバーヘッドプロジェクター)だった。私はマッキンゼー時代に若手のプレゼン力を鍛えるため、こっそり次のスライドやOHPシートを1枚抜き取っていた。ところが彼らはそれに気づかず、スクリーンに出てきた“次の次”の資料を説明する。目の前のチャートを説明することに必死だから、1枚飛ばされてもわからないのだ。

 しかし、いくら懇切丁寧に説明したところで、自分がいいたいことが相手に伝わるとは限らない。むしろ、OHPやパワポに頼っていたら、人の心を動かすことは難しい。では、どうすればよいのか?

 そのヒントは、今回のプレゼンブームの嚆矢となった故ランディ・パウシュの「最後の授業」(*注)にある。

 パウシュのプレゼン力が素晴らしかった理由は、膵臓がんの末期で死に直面していたことや写真・映像を効果的に使ったことも大きいが、結局はスピーチのテーマが、「子供の頃の夢を持ち続けて努力することがいかに大切なのか」という1点だったからである。

 つまり、プレゼンで最も大切なのは「たった一つの物語」なのだ。逆にいえば、プレゼンは全体で一つの物語になってなければならないわけで、その物語さえ相手に伝われば、チャートも映像も必要ないのだ。

 私自身、講演やシンポジウムで世界中を回っているが、聴衆が500人を超えるような広い会場では、まずパワポは使わない。たいがい用意されたスクリーンが小さすぎるうえ、チャートを使って説明すると聴衆がそれを読もうとして神経を集中するため、話を聞くのが疎かになるからだ。

 図表、グラフ、イラスト、写真などは、物語のテーマに対する証拠や物語の大きな流れを強調するための補完的なものでしかない。プレゼンのカギは、あくまでも「物語」なのだ。

【*注】最後の授業……2007年にカーネギーメロン大学のランディ・パウシュ教授が行なった生前最後の講義。全米で大反響を呼び、日本でも翻訳書がベストセラーになった。

※週刊ポスト2013年8月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相の「官僚不信」と霞が関の警戒 総務大臣時代の次官更迭での「キツネ憑きのようで怖かった」の逸話から囁かれる懸念
週刊ポスト
男気を発揮している松岡昌宏
《国分騒動に新展開》日テレが急転、怒りの松岡昌宏に謝罪 反感や逆風を避けるための対応か、臨床心理士が注目した“情報の発信者”
NEWSポストセブン
水原受刑者のドラマ化が決定した
《水原一平ドラマ化》決定した“ワイスピ監督”はインスタに「大谷応援投稿の過去」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」と「日本配信の可能性」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン
現在は三児の母となり、昨年、8年ぶりに芸能活動に本格復帰した加藤あい
《現在は3児の母》加藤あいが振り返る「めまぐるしかった」CM女王時代 海外生活を経験して気付いた日本の魅力「子育てしやすい良い国です」ようやく手に入れた“心の余裕”
週刊ポスト
熊本県警本部(写真左:時事通信)と林信彦容疑者(53)が勤めていた幼稚園(写真右)
《親族が悲嘆「もう耐えられないんです」》女児へのわいせつ行為で逮捕のベテラン保育士・林信彦容疑者(53)は“2児の父”だった
NEWSポストセブン
エスカレーターのふもとには瓦礫の山が
《青森東方沖地震の余波》「『あそこで誰が飲んでた』なんて噂はすぐに広まる」被災地を襲う“自粛ムード”と3.11を知る漁師のホンネ「今の政府は絶対に助けてくれない」
NEWSポストセブン
リクルート社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況に
リクルートの“サクラ行為”内部告発者がSNSで誹謗中傷の被害 嫌がらせ投稿の発信源を情報開示した結果は“リクルートが契約する電話番号” 同社の責任が問われる可能性を弁護士が解説
週刊ポスト
上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン