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中国の反日映画で殺戮やレイプ表現するのは刺激的作品正当化のため

 反日教育を刷り込まれた中国人は、反日感情を娯楽を通じて醸成させる。日本でも話題となった反日映画について、フリーライターの西谷格氏が解説する。

* * *
「抗日戦争」における中国の虚飾・捏造ぶりは映像作品にも顕著だ。 反日映画・ドラマは、第2次大戦終結直後の1940年代から作られ始め、すでに数百作品が世に出た。
 
 60年代に作られたモノクロ映画では、日本兵は人間というよりグロテスクなエイリアンのように描かれる。たどたどしいしゃべり方で、時おりカッと目を見開いて「ミシミシ!(食事を要求するメシ、メシが訛ったもの)」、「バガヤロ!」、「トヅゲギー」などの日本語(?)を発作的に叫ぶ。
 
 こうした抗日映画やドラマは学校の歴史の授業で流されるほか、街の商店や食堂、職場や家庭などで目にする機会が多く、長年、庶民の娯楽として馴染み深い。毎日たいていどこかの局で放映している。
 
 最近では、マンネリ化を避けるためか内容がエスカレート。主人公の武闘家がカンフーで日本兵を真っ二つにしたり、手榴弾を地上から投げて戦闘機を撃墜するなど、あまりに荒唐無稽な内容に中国の視聴者すら呆れ、中には当局が編集し直しを命じるものもあるという。
 
 テレビドラマばかりではない。“大作”として知られる映画ですら、多くの虚飾が散りばめられている。
 
 北京五輪の開会式の演出で知られ、ヴェネツィア国際映画祭で2度の金獅子賞をとった張芸謀(チャン・イーモウ)監督が“南京事件”を描いた『金陵十三釵』(11年)は年間興行収入1位、約71億円を達成したヒット作で、「日本兵が人間的に描かれている」とも評された。
 
「女がいるぞ」「全員処女です!」と嬉々として叫び、教会に避難している少女10数名を襲う場面など“残虐な日本兵”の描き方は型通りだが、一方で、音楽を愛する日本人士官が教会内でピアノを弾いて「故郷」を歌うシーンもあり、このあたりが“人間的”ということらしい。

 同様に話題となった陸川監督の『南京!南京!』(09年)でのレイプシーンは凄惨で、正視に堪えない。鬼の形相の日本兵がケモノのような雄叫びをあげ、女性の服を引き裂いて輪姦する。

「南京陥落祝賀行列」の場面では巨大な和太鼓を神輿のように担ぎ、100人ほどの日本兵たちが白シャツ姿で廃墟の中を踊りながら練り歩く。一糸乱れぬ整列で、全員無言、無表情。「不気味かつ意味不明な日本」が大げさに描かれる。ちなみに作品の冒頭では「この映画を30万人の犠牲者たちに捧ぐ」と宣言している。

 なぜ「抗日モノ」がこれほど執拗に作り続けられるのか。

 一つには、凄惨な殺戮やレイプでも「日本兵の蛮行を表現するため」と言えば許されるため、一般的な映画よりも刺激的な作品が作りやすいという背景がある。日本を叩くためならば、“表現の自由”が認められるというわけだ。

 テレビドラマについては、今でもすべての番組に対し当局が審査している上、制作会社にはテレビやラジオなどメディアを監視する「国家広電総局」が「ドラマ制作許可証」を発行し、睨みをきかせている。政府によるテレビ局への補助金や反日モノを作る予算枠もあり、局側が反日ドラマを次々に作る後押しとなっている。

 こうして表現がエスカレートし、史実はどんどんねじ曲げられる。

 反日映画を見続けた結果、中国人の間では「日本兵(ひいては日本人全般)や日の丸、君が代は憎むべき存在」という共通認識が生まれ、巷には反日グッズが横行している。

※SAPIO2013年8月号

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