連日熱戦が繰り広げられる甲子園。現在、日本最高峰のプロ野球の舞台で指揮を執る12球団の監督も、かつてはその“聖地”を目指して、汗を流していた。
1980年夏の熊本県予選決勝は、現在でも県大会のベストゲームの1つといわれる。エースで4番の秋山幸二(現ソフトバンク監督)を擁する八代と、捕手で3番の伊東勤(現ロッテ監督)がいる熊本工の対戦だ。
この決勝戦は雨で2度も順延されたが、試合展開も二転三転した。6回、秋山が先制弾を打てば、続く7回には伊東が秋山から逆転2ランを放つ。するとその裏に八代が2点取り返す……というシーソーゲーム。8回にはお互いに1点ずつ取り合い、4-3の八代リードで迎えた9回2死三塁のピンチで、打席には伊東。ここで秋山の八代バッテリーは敬遠を選択した。
明暗を分けたのは次打者への3球目だった。2ナッシングまで追い込んだ秋山は3球勝負に出るが、判定はまさかのボール。この際、伊東が二盗を決めていた。
これで動揺し、「気持ちの整理がつかないまま投げた」秋山が、後続に打たれて3失点。熊本工が競り勝った。
※週刊ポスト2013年8月30日号