国際情報

落合信彦氏 イスラエルによるイラン空爆の可能性を指摘

 中東の情勢が緊迫している。アベノミクスで浮かれている国内とは違って、ウォール街では中東の暴発を「今年最大の経済リスク」と捉えている。作家の落合信彦氏が暴発の可能性を指摘する。

 * * *
 参議院選挙に圧勝した首相の安倍は、その直後に東南アジア諸国を歴訪し、8月下旬にはバーレーン、クウェートなど中東諸国へ外遊に出かける予定だ。

 安倍は「選挙によってアベノミクスが国民に信任された」と気をよくしているようだが、アベノミクスによる泡沫の好景気など一瞬で吹き飛びかねないリスクがすぐ目の前にある。しかも、その「震源地」はまさに安倍がこれから訪れようとしている中東なのである。

 ウォール街では、この秋にも勃発する「中東危機」に備えて“逃げ時”をいつにするかの情報が飛び交っている。巨額のマネーを動かす者たちは既に市場の壊滅的な急落を見据えているのだ。それほどに事態は差し迫ってきた。その来るべき中東危機とは、イスラエルとイランの衝突である。

 イスラエル首相のネタニヤフが国連総会の演説で、爆弾のイラストを使いながらイランの核開発を批判したのは昨年9月のことだった。その時にネタニヤフは、イランの濃縮ウラン保有量が核兵器1個分に達する手前に、レッドライン(越えてはならない一線)があると明言した。にもかかわらずイランはウラン濃縮施設の稼働を止めなかった。20%濃縮ウランの保有量は既にネタニヤフの言うレッドラインを事実上越えているという見方さえある。

 イスラエルはこの5月、イランと良好な関係を保つシリアの首都・ダマスカス近郊にある軍関連施設を空爆した。「次はお前たちの番だ」というイランへの警告に他ならない。

 正面からの軍事攻撃には国際的な非難が高まるため、イスラエルは諜報機関・モサドを使って核開発に携わるイランの科学者を暗殺し、ウラン濃縮施設のシステムにサイバー攻撃を仕掛けるなどしてきた。だが、それに対してイランは、インドやグルジアにあるイスラエル大使館へのテロ攻撃で応じた。緊張は臨界点近くに達してしまった。

 7月末にイスラエルはアメリカの仲介でパレスチナ自治政府との直接協議を約3年ぶりに再開した。中東和平への第一歩のように報じられているが、両者の主張には大きな隔たりがある。パレスチナ側は67年の第3次中東戦争の前の境界線を基本に交渉しようとしており、イスラエル側にとってはお話にならない前提だ。協議再開は周辺諸国を油断させるポーズに過ぎないのではないか。

 イスラエルはイランの北に位置するアゼルバイジャンに対して、イラン空爆に際してのサポートを求めていて、アゼルバイジャン側が協議に応じたとの情報がある。

 また、核巡航ミサイルを発射できる潜水艦をペルシャ湾に潜らせているともされる(イスラエル政府は核保有について「否定も肯定もしない」というスタンスだが、同国が200発以上の核兵器を保有していることは公然の秘密だ)。国土が日本の四国程度、人口も約800万人と少ないイスラエルは、陸戦ではなく海戦や空戦で決着をつけるシナリオを描いている。

 ネタニヤフの決断ひとつで、イランの拠点を叩く準備は整った。こうした情報から、多くの専門家は「イスラエルのイラン空爆」を懸念する。

※SAPIO2013年9月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン