ビジネス

安い外食店使用の霜降り加工肉 安い輸入肉に脂や添加物注入

 本来、代用食と言えば菜食主義者や宗教上の理由から肉を食べられない人のために肉に模した料理などを指すものだった。今では商業上の理由から多くの代用食品が開発されている。「ニセモノ」が本物として売られることもある。

「色や形、食感をカニ肉に似せたカニかまぼこ以上に“似て非なる”代用品」として「ラクトアイス」を挙げるのは、『ニセモノ食品の正体』(宝島社)の著者であるサイエンスジャーナリストの中川基氏だ。

「『アイスクリーム』はミルクをふんだんに使い、乳固形分15%以上などの基準がありますが、表示を見ればわかる通り市販のアイス製品の多くがラクトアイス。これは『植物性ミルク』で作られたアイスクリームもどきです。

 植物性ミルクとは、本来混ざらない水とサラダ油を乳化剤で均一になじませたもの。常温保存ができるホイップクリームやコーヒー用ミルクとして売られたり、外食店などで生クリーム代わりに使われたりします」

 味では本物の生クリームに劣るが、安価で長期保存可能など、使用する側のメリットは大きい。

 技術や添加物の進歩は数多くの“もどき”食材を誕生させている。代表的なのが肉まんやギョーザなどの肉加工食品や、かまぼこなどのすり身製品に広く使われる「大豆たんぱく」だ。加工食品メーカーの開発担当者A氏が語る。

「肉類の使用量を減らしてコストを抑えたり、商品の形を保つ『つなぎ』目的で使われることが多い。あまり多く配合すると臭みが出るが、上手に使えばギョーザやハンバーグを家庭で手作りするより安く、大量に作ることができる。大豆たんぱくは食物繊維が豊富で、栄養面で優れているというメリットもある」

 市販のチキンナゲットには、この大豆たんぱくが大量に使われているものがある。肉はコストが比較的高い食材だから、ほかにも様々な“技術”が投入される。例えばリーズナブルな外食店の多くでステーキなどに使われる「霜降り加工肉」。

「インジェクションビーフと呼びます。安い輸入肉に脂や添加物を注入することで霜降りを再現する。しかし、サシの入り方が不自然で、本物と並べれば違いは一目瞭然です」(A氏)

 中川氏によれば、最近加工機械が進化して肉質が良くなり、外食店向けとして大量に出回っているというが……。

「加工時に40~50℃の液体を注入するので、細菌などが肉の内部で発生するリスクがある。衛生的に使えば問題ないが、機械の普及によって不衛生な環境で使う業者が出てくるかもしれない」(中川氏)

 中には、代用品をあたかも「本物」であるかのごとく提供する外食店もある。

「フカヒレと言いながら実際はエイのヒレだったり、フォアグラを使っているとしながら代用品を使っているケースが見られます。鶏レバーに乳化剤やガチョウ油脂、ラードなどを混ぜて成型し、見た目や味を似せたペースト状のニセフォアグラ食材があるのです」(中川氏)

 消費者はどうすればそれらを見分けることができるのか。

「値段がもっともわかりやすい。スーパーで2000円程度するステーキ肉がレストランで1000円で提供されるなど、市販価格よりも大幅に安い時は別物と考えたほうがよい」(中川氏)

 安さには必ず理由がある。

※SAPIO2013年9月号

関連キーワード

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン