スポーツ

同期の差「田中は甲子園敗戦が糧、斎藤は挫折知らず」の指摘

 かつて好敵手として鎬を削った両者の間に、いつの間にか大きな実力差が生じてしまうことは少なくない。

 例えば野球では「ハンカチ王子」こと日本ハムの斎藤佑樹(25)と「マー君」こと楽天の田中将大(24)のライバル対決は、連勝記録を打ち立てるなど“最強のエース”の名をほしいままにしている田中が絶好調。

 ゴルフでは、石川遼(21)と松山英樹(21)のライバル関係が注目されるが、戦績の低迷が続く石川に対し、松山は全米オープン10位、全英オープン6位と日本人最高順位を記録。ランキングでも一気に石川を引き離している。

『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社刊)の著者でビジネスコンサルタントの俣野成敏氏が、ライバルに差がつく要素として挙げたのは、「例外対応力」だ。

 学校で取り組むのは「答えのある問題」ばかりで、教科書通りにやれば良い成績が取れ、教師や監督に「いわれたこと」を一生懸命やっていれば褒められた。しかし、社会人になってからの仕事に“正解”はない。

 とりわけ「例外的なケース」に対していかに自分なりの答えを出して対応していくか。その積み重ねが大切なのだと俣野氏はいう。

「例えば、駅員が嫌がる仕事のナンバーワンは『有人改札』の担当です。そこに来る人は、急いでイライラしている人、路線や乗り換え方がわかっていない人、外国人、お年寄りなど、いわば“例外”ばかり。対応していると神経がすり減ってしまうというのです。

 しかし、予想しなかったトラブルに対応する能力こそ、上に立つ人間に最も重要なこと。マニュアルにも載っていない、上司に教えてもらったこともない“例外”にどう対応するかで大きな差がつく」

 その時に、「相手の役に立とう」という姿勢で答えを見出そうとするか、思考停止してしまうかで、成長度が大きく左右されるという。

 ゴルフにも例外対応力が求められる。とくに海外メジャー大会などは、“例外”の連続といえるだろう。きれいに整備された日本のコースと違い、腰以上の深さのあるラフや、どう出せばいいのかわからないほど深いバンカー、ボールが止まらない高速グリーン、そして目まぐるしく変わる気象条件……毎ホールのようにトラブルに見舞われ、そのたびに柔軟な解決策を探していかねばならない。

「今年の全英で、松山は徹底してドライバーを使わずに確実にフェアウェーをキープするなど、見事な対応力を見せました。海外ツアーでもドライバーと飛距離にこだわってスコアを崩す場面の多い石川とは対照的です」(ゴルフ誌記者)

 この“例外対応力”は、仕事のレベルが上がれば上がるほど試される。過去に経験がない事態に直面し、周囲に相談できる相手もいなくなってくるからだ。

 だからこそ、将来のために若い時から「現場で鍛えること」が必要だというのは、ハナマルキャリア総合研究所代表の上田晶美氏である。

「机上で知識を積み重ねることも重要ですが、何より現場でもまれることがその人の成長につながります。学んで基礎をつけても、現場で実践できなかったら無駄になってしまいます」

 当然、現場でのチャレンジで手痛い失敗をする可能性もあるだろう。しかし、ここで重要なのは、失敗を「教訓」にしていくことだ。

「失敗を教訓にできる人は、失敗のたびに大きな糧を得られる。何も経験していない人よりもずっと上に行ける可能性が高い」(前出・俣野氏)

 田中はプロに入ってから、野村監督に「負けに不思議の負けなし」とたたき込まれた。どんな負け方にも理由があり、それを見つけて反省することが次につながるという教えだ。

 スポーツライターの永谷脩氏が指摘する。

「田中の場合、甲子園で斎藤に負けたことが大きな糧になっています。田中はそこで勝つことのこだわりを学んだ。プロでも楽天という弱小球団に入ったことで、野村監督の言う通りに敗北のなかから糧を得ていったのです。個人を鍛えるという意味では、最適な環境にいたといえるでしょう。

 一方、斎藤は大学野球で、常勝軍団である早大のエースとして大きな挫折を味わうことが少なかった。だからプロになってピンチに直面したときに、どう対処すれば良いかわからなかったのです。今後どうなるかはわかりませんが、現時点での2人の差はそこにあります」

※週刊ポスト2013年9月6日号

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト