ビジネス

日本の住宅価格は一部の例外を除き永遠に上がらないと大前氏

「国土交通白書」によると、日本の若い人たちの持ち家比率が低下しているという。この事実を目にした大前研一氏は、初めて日本人は賢明な選択をしているという。なぜ、家を持たないことが賢いのか、大前氏が解説する。

 * * *
 最近、私が注目したニュースがある。若い人たちの持ち家比率が低下した、という統計だ。2012年度の「国土交通白書」によると、1983年から2008年の25年間で、30~39歳の持ち家率は53.3%から39%に、30歳未満の持ち家率も17. 9%から7. 5%に低下し、逆に40歳未満で民間の賃貸住宅に住む割合は39. 7%から59. 7%に上昇したのである。

 一方、総務省の家計調査によれば、2012年は2人以上の世帯の持ち家率は81.4%で前年より2. 5ポイント増え、4年ぶりに過去最高を更新した。ということは、大まかに言うと、持ち家率は40代以上で上昇し、20代・30代で低下しているわけだ。

 私は1990年に月刊誌『文藝春秋』で、バブル崩壊によって日本の不動産は10分の1になるから買ってはいけない、と警告する論文を書いた。以来、日本の不動産価格が上がることはないと私は言い続けてきたが、その後も現在の40代・50代を中心に多くの人が住宅を高値づかみしてしまい、今や返済に四苦八苦しているという状況だ。

 なぜ、彼らは焦って住宅を買ったのか? 住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)の「ゆとりローン」や年金住宅融資(現在は廃止)の「ステップローン」(どちらも当初5~10年間は返済金額を抑え、その分を設定期間終了後に上乗せして支払うという仕組みの終身雇用・定期昇給を前提とした住宅ローン商品)に騙されたという側面もあるが、根本的には「いま買わなかったら、もっと高くなる」と思ったからだ。

 しかし、若いうちに25~35年ローンを組んで住宅を買ってしまうと、人生を「負け=マイナス数千万円」からスタートすることになる。

 今後、人口が減り続ける日本の住宅価格は、下がることはあっても上がることは、東京都心部など一部の例外を除いて、おそらく永遠にないだろう。実際、今や大半のマンションは、住宅ローンの支払いが賃貸に出した時の賃料を上回る。

 つまり、同レベルの物件であれば、住宅ローンを組んで購入した時の月々の返済額よりも安い月額家賃で借りることができるわけだ。最後は自分のものになる、という安心感もあるだろうが、その時に売りに出してみれば二束三文で、引退後の住宅の購入もままならない。

 20代・30代の持ち家率が低下した理由を国土交通省やマスコミは、賃金上昇率の伸び悩みや非正規雇用の増加などの影響で住宅ローンを組めない・払えない世帯が増加したからだと分析している。だが、結果的に彼らが持ち家ではなく賃貸を選択するようになったのは、戦後初めて日本人が「住宅を所有しない」という極めて適切な判断をしているということだ。

※週刊ポスト2013年9月13日号

関連キーワード

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン