ライフ

電話に出ぬ若者 「電話は時間を拘束する迷惑ツール」と認識

 1回では絶対に電話に出ない若い部下が増え、携帯電話を巡る世代間衝突が起きている。電話に出られなかったことに対し、その場凌ぎの嘘で塗り固めることも若者の特徴の一つ。コンビニ店長(63歳)から聞いた話はまるでコントだ。

「その日、シフトに入っていたバイトが急病で休むことになりました。代わりに学生バイト3人に電話したんだけど誰も出ない。結局、その日は妻に手伝ってもらいました。

 翌日、3人からメールがきていたんだけど、たまげちゃった。皆、『すみません、携帯をトイレに落としちゃって修理に出してました』とさ。トイレから手でも伸びているのかねぇ(苦笑)。最近の若いやつは揃いも揃ってすぐにバレる嘘をつく。無理なら無理で、電話で断わってくれればいいのに」

 近年、若者たちの間で指摘されるコミュニケーション障害。人と面と向かって話せない、初対面の相手と話すのが億劫──などの事例が報告されているが、年上の相手に対し、“クッション言葉”も挟まずいきなり話すのも“コミュ障”の一つに数えていいのかもしれない。

 加えて携帯が普及し、日常でも会社生活でも不可欠になるに従い、公私で使い分けていた電話マナーが廃れていったこともトラブルの背景にある。

「我々の若い頃は携帯電話もなく出先からの会社への定期連絡は常識。外出者に伝言をするのも訪問予定先に『電話するように』とメッセージを残し、それを聞いた社員は、すぐに連絡していましたよ。その後、ポケベルに変わりましたが、ポケベルが鳴るとすぐに連絡したものです。ところが、最近は常に会社と連絡が取れるのに、携帯がない時代より連絡が取れない」

 とはスポーツメーカー部長(58歳)のボヤキである。

「携帯電話の番号を人に教えるということはいつでも連絡をくれればつかまりますよ、ということを宣言するようなモノでしょ。なんで若いヤツは電話にでないのか」(機器販売、46歳)といった声も聞こえてきた。

 物心ついた時から携帯が身近にあった今の若者にとって、携帯に「出る」「出ない」には、独特の行動基準があるようだ。ビジネスコミュニケーション講師の大嶋利佳氏が語る。

「若い世代の方ほど1回で携帯に出ない。その理由を聞いて回ったんですが、どうやら避けているとか、無視しているとかではないようなんです。出ないのはその時、自分が何か作業をやっているから邪魔されたくない──という感情が強い。といっても作業が必ずしも仕事を指す訳ではなく、テレビ鑑賞も漫画読書も作業の範疇に入るみたいなんですがね(苦笑)」

 もちろん若者にだって、返事をしなきゃいけないという気持ちはある。

「でも電話で返すと相手の邪魔になるだろうという遠慮が働くらしい。なのでメールやLINEなどで『さっきの電話は何だったんでしょうか?』とメッセージを送る。幼少期からメール文化で育ってきた彼らにとってはメールが最もストレスもコストも少ないツールだそうです。一方の電話は自分にとっても相手にとっても時間を拘束する迷惑なツールという認識がある」

※週刊ポスト2013年10月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン