ライフ

地域差存在関西で人気の魚・ベラは関東でクロダイの餌扱い

 醤油の味や出汁のとり方など、日本のなかでも地方によって様々な違いがある。釣魚という食材にも存在する地域による違いについて、釣り関連の著書を多く執筆・編集している高木道郎氏が解説する。

 * * *
 食の好みは地域による違いが大きい。交通網と情報網が発達していなかった時代には集落ごとに独自の食文化が育まれ、山や川、岬や半島がそうした味の個性を守っていた。今はさすがに集落単位で食文化が異なるといったケースは少ないが、北海道と九州では味付けの好みも食材の評価も驚くほど違っている。釣魚という食材に限っても、地域差は大きい。

 関東の釣り師が喜んで釣るタカベは関西や九州ではまったく人気がないし、逆に九州で喜ばれるアブッテカモ(スズメダイ)は関西や関東の釣り師にとってはただのエサ取りである。四国や九州で人気が高く、九州では競技会さえあったバリ(アイゴ)も、ヒレに毒を持ち、内臓に独特の臭みがあるため関東では毛嫌いされる。

 ところが、四国や九州では専用のウオバサミでつかみ、専用のトゲ切りバサミでヒレの先端をカット、ついでに内臓も抜き出してていねいに持ち帰ったりする。四国には「アイゴの皿ねぶり」という言葉さえある。関東以北で人気が高く、下北半島の宿では立派な尾頭付きとなって食膳に載っていたウミタナゴだが、関西以西の釣り人にはまるで人気がない。

 ベラはクロダイ釣りの代表的なエサ取りだが、関西、とくに瀬戸内方面では専門の仕立て船が出るほど。広島の居酒屋ではカウンターの大皿にベラの南蛮漬けが山盛りにされていたが、驚くほど美味いわけでもない。

 関西人は、キュウセンはベラの王様で、なかでも青ベラは特別と主張するが、関東人にとって青も赤もベラはベラ、キュウセンもササノハもベラはベラだ。関東と関西では釣りの入門書で扱う魚種も若干違う。私だってベラ釣りのノウハウを書けといわれても困る。ものみなグローバル化の時代にこれほど依怙地な地域性があるのも珍しい。

■高木道郎(たかぎ・みちろう)1953年生まれ。フリーライターとして、釣り雑誌や単行本などの出版に携わる。北海道から沖縄、海外へも釣行。主な著書に『防波堤釣り入門』(池田書店)、『磯釣りをはじめよう』(山海堂)、『高木道郎のウキフカセ釣り入門』(主婦と生活社)など多数。

※週刊ポスト2013年10月11日号

関連キーワード

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン