スポーツ

朝食会に1日だけ遅刻した仰木彬に三原脩が見せた粋な気遣い

 およそ80年におよぶプロ野球の歴史で、名将と呼ばれる監督といえば様々な顔が浮かぶだろう。そのなかから、セ・パ5球団の監督を歴任し魔術と呼ばれた采配で知られる三原脩について、スポーツライターの永谷脩氏が綴る。

 * * *
 セは巨人、パの楽天の優勝が決まった。そんな中やたら目立ったのは「三原脩」の名前だ。巨人・原辰徳監督の6度目の優勝、楽天・星野仙一監督の3球団目の優勝が、それぞれ三原と並んだというのが理由である。

 三原は鶴岡一人、水原茂とともに戦後プロ野球界の3大監督といわれる。特に、同じ香川県出身の水原とは好対照で、永遠のライバル。水原の復員と同時に巨人監督を追われる形で西鉄に移り、その巨人相手に3連覇を果たしたのはあまりに有名だ。

 松竹の女優を夫人にした慶大のエリート・水原とは違い、大学近くの喫茶店のマドンナと恋に落ち、学生結婚をした早大の三原は庶民に近い存在だった。

 同じ「脩」という名前が縁で、ヤクルト監督時代の三原に人を介して紹介してもらい、挨拶に行った時だ。「1週間くらい、出勤前にウチに来て、朝食でも食べたらどうだ」と誘われた。初日、「玄関の庭石には打ち水がしてあったか?」と聞かれ、答えられなかった。

 そこで、次の日こそしっかりと見ておこうと出かけると、今度は「椿の蕾は開き始めたかな」と来る。人に会う時は、必要以上の気配り、目配りをしろという意だった。

 同じ“洗礼”を受けた者が、選手で1人だけいる。近鉄、オリックスで監督をやった仰木彬だ。三原の西鉄監督時代のこと。遊びたい盛りの若者が、ナイター明けに毎朝三原の朝食会に通うのは辛く、1日だけ遅刻したことがあった。

 その時、三原は朝食を食べずに待っていて、仰木が姿を見せると、仰木に対して「場末の安い酒を飲むから二日酔いをする。一流の場所で一流の酒を飲め」と、叱りもせずに小遣いをくれたというのだ。

「叱ってくれるならば、クソって反発もするけれど、小遣いだからな。参っちゃったよ」

 仰木は後にこう語っていたが、人使いのコツはこの時代に教わったと懐古していた。

※週刊ポスト2013年10月18日号

関連記事

トピックス

優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン