ライフ

認知されていない子供が父親の遺産を相続する手続きの方法

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「認知されていないが、父の遺産を相続する手続きを知りたい」という質問が寄せられた。

【質問】
 成人になったとき、母から死んだと教えられていた父が生きていると告白。ただ、認知はしてもらえなかったようです。その父が余命少ないと聞き、遺産はどうなるのだろうと思いました。やはり認知されていない子供は相続できませんか。また、そうであっても相続するにはどうすればよいでしょう。

【回答】
 正式な夫婦の間の子は、嫡出子として生まれながらに法律上の親子です。しかし、結婚していない男女の間の子の場合、母子関係は、分娩により親子関係が明確ですので、当然に法律上の親子と認められますが、父親は認知届を提出することで親子関係が成立します。認知がないと法律上の親子ではなく、相続できません。

 認知してくれない場合は、子やその親権者は、家庭裁判所に認知を求める調停を申し立て、最後には認知の裁判も可能です(強制認知)。裁判手続きで、生物学的な親子関係の有無が問題になれば、親子鑑定が実施されます。現在、DNA鑑定は高い信頼を集めており、裁判所もいたずらに関係者のプライバシーを公開することなく判断できるところから、申請があれば採用します。

 問題は、DNA鑑定には血液などの鑑定資料が必要ということです。男性が拒否すれば鑑定はできません。しかし最高裁は、(1)受胎可能の期間中、当該男性と継続的に情交を結んだ事実があり(2)当該男性以外の男性と情交関係があった事実が認められず(3)血液型の矛盾がない場合には、父子関係が認められるとしています。

 この他、子供の命名など父親としての言動があれば、より有力な証拠になります。認知を受ければ、子供として相続人になれます。ところで、民法では非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされています。しかしながら、最高裁は先ごろこの規定が法の下の平等に違反すると違憲判決を出しました。今後、民法が改正され、相続分は嫡出子と平等になります。

 余命少ないのであれば、本人の任意認知が可能な今のうちに急いで認知を求めるべきです。死後は強制認知しか方法はありませんが、身分関係の安定のため、父親の死亡後3年を経過するとできなくなります。

※週刊ポスト2013年10月18日号

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン