国内

特定秘密保護法で汚染水漏洩の情報隠蔽の危険性を弁護士指摘

 まさか、と思うのは甘すぎる。言論統制社会が現実のものになろうとしている。安倍政権が臨時国会で「特定秘密保護法案」と「児童ポルノ禁止法改正案」を成立させ、国民の知る権利を奪う言論弾圧に乗り出す準備を進めているからだ。ジャーナリストの武冨薫氏が解説する。

 * * *
「審議に時間をかけるとスパイ防止法のようにマスコミと野党の反対で廃案に追い込まれる。臨時国会に法案を提出したら一気呵成に成立させなければならない」
 
 特定秘密保護法案を手がける官邸の担当者は、自民党内で法案審査を担当するインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチームの幹部たちにそう説いた。
 
 法案は安倍政権が設立をめざす日本版NSC(国家安全保障会議)とセットで制定されるもので、各省の大臣や長官が「その漏洩が我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがある」(法案概要)と判断した情報を「特定秘密」に指定する。
 
 秘密を取り扱う職員を限定し、漏洩した者には最大懲役10年、漏洩の教唆は同5年の罰則が科される。内閣情報調査室が初めて策定を担当する法案で、歴代自民党政権の悲願だった「スパイ防止法」が形を変えたものといっていい。

 スパイ天国と呼ばれる日本で、軍事機密など安全保障にかかわる情報漏洩の防止は必要だ。しかし、安倍政権が「スパイ防止」を大義名分に制定を目指すこの法案には、全く別の狙いが秘められている。

「国民に知られると都合の悪い情報を政府が隠してしまう」という徹底した情報統制が可能になるのである。

 同法の対象となる情報は安全保障に直結する防衛機密だけではない。法案概要によると、特定秘密となる事項は「防衛」のほか、「外交」「安全脅威活動(スパイ活動)の防止」「テロ活動防止」の4分野の幅広い情報が対象で、どんな情報や資料を指定するかは事実上、役所の裁量次第だ。

 しかも、いったん特定秘密に指定されると、国民にも国会にも指定が本当に秘密に値するかをチェックする手段はない。そのうえ諸外国の類似法と決定的に違う点は、いったん秘密扱いにされた情報が、事実上、永遠に開示されないことである。絶対に検証されないなら、権力者は安心して何でもかんでも秘密にするだろう。

 例えば、原発事故など国民の安全のために必要な情報が、特定秘密指定で逆に国民の目から隠される危険性を孕んでいる。

 安倍首相は五輪招致が決まったIOC総会の演説で福島原発の放射能汚染水漏れについて、「完全にコントロールできている」と表明したが、その直後、汚染水貯蔵タンクの破損が見つかり、「ウソつき」と大きな批判を浴びた。

「特定秘密保護法が成立すれば、汚染水漏洩事故の情報自体が隠される危険性がある」と指摘するのは日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部事務局次長の齋藤裕・弁護士だ。

「秘密指定の4分野のうちテロ防止事項には、〈テロ活動による被害の発生・拡大の防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究〉も特定秘密の対象とされている。

 原発はテロの警戒対象であり、設計図など原発の弱点を示す情報が特定秘密に指定されれば、国民の安全確保のために開示されるべき汚染水タンク破損の事実そのものまで一切明らかにされない可能性が高い。大量の使用済み核燃料棒を保管しながら津波で甚大な被害を受けた福島原発4号機がどうなっているかの情報も間違いなく秘匿されるだろう」

※SAPIO2013年11月号

関連記事

トピックス

大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン