「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
2025年6月3日、長嶋茂雄さんが89歳で亡くなった。V9巨人の中心にいた現役時代、2度の監督時代、そしてユニフォームを脱いでからも、“ミスター”の姿と言葉は、日本中を明るく照らし続けた。
『週刊ポスト』では、20年以上にわたって続いた金田正一氏、王貞治氏との新春名物企画「名球会ONK座談会」で丁々発止のやり取りを繰り広げた。2025年の最後に長嶋茂雄さんの思い出を振り返るべく、当時の“ONK座談会”の様子を再録する──。【前後編の前編】
ボクは背広の男ではない
金田:ワンちゃんよ、血液型は何や?
王:ボクは典型的O型人間ですよ。
金田:シゲは?
長嶋:B型かな。
金田:ワシと同じや。B型はとにかくオッチョコチョイが多いからな(笑い)。自分を中心に世界が回っていないと気がすまん性格の人間が多い。
長嶋:アハハ…そうですね。そう、そうです。
金田:しかし、オッチョコチョイでも知恵はシゲよりワシの方があるからな(笑い)。
長嶋:カネさんもひどいことをいいますね(笑い)。
──記念すべき第1回(1981年1月9日号掲載)のONK座談会でのやり取りだ。史上唯一の400勝投手である“カネやん”、通算868本塁打の世界記録を持つ王氏、そしてミスターが、賑やかな野球談義を繰り広げていく。
企画がスタートしたのは1980年の“10.21長嶋監督電撃解任”の直後。王氏も現役を引退し、巨人の助監督に就任したタイミングだった。
ミスター解任に納得がいかない様子のカネやんにONがたじたじとなる一幕もあれば、1958年のプロデビュー時の「巨人・長嶋vs国鉄・金田」を振り返るくだりもあった。
ミスターが「みんな『四打席・4三振』というけど本当は『五打席・5三振』なんですよね。翌日、金田さんがまたリリーフで登板してきて、ボクまた三振させられたんですからね」と述懐し、カネやんが「それを覚えていてくれたんか、偉いッ(笑い)」と応じる。終盤には、2人のこんなやり取りもあった。
金田:シゲはもう一度ユニフォームを着なきゃいかん。ワシはこの男にだけはユニフォームを着せておきたい。
長嶋:ボクから野球を取ったら何も残りませんからね(笑い)。
金田:ホント、ワシの夢なんじゃ。シゲが監督、オレが監督でゲームをやるのが…。シゲはどこのチームでもええ。あんまり巨人になんかこだわらんでええ。背広でフロントに閉じ込めることを考えるような巨人には(笑い)。
長嶋:やっぱりボクは背広の男ではないですから。
──そのやり取りの通り、ミスターは1993年に巨人監督に復帰する。1年目は3位に終わり、オフに中日から補強したのが、落合博満だった。
