国内

安倍首相 靖国参拝宣言など人気取りし実現可能性に頭及ばず

 激しい内戦の続くシリアでアサド政権が化学兵器を使用した問題が、国際社会を大きく揺さぶった。

 国連の安全保障理事会において、シリアに国際管理下での廃棄を課す決議が採択されたが、そこに至るまでの経緯からは、「日本の未来とも密接にかかわる重要なポイントが見えてくる」と指摘するのは、作家の落合信彦氏。以下、落合氏が解説する。

 * * *
 オバマが「シリア攻撃を決断した。議会の承認を取る」と表明した際に、首相の安倍は「重い決意だと受け止める」とコメントした。

 実際には「重い決意」などまるでなく、攻撃は行なわれずに安倍も赤っ恥をかいたわけだが、何でも無条件にアメリカを支持すればよかった時代が終わったことを学ぶいい機会ではなかったか。

 目の前の脅威である中国は、尖閣諸島周辺で領海侵入などの挑発を繰り返している。日本では相変わらず、「アメリカは『尖閣は日米安保の適用範囲』と言ってくれたから安心だ」と本気で考えている人が少なくない。

 だが、今回のシリア問題の経緯を見れば、仮に中国軍が尖閣上陸を強行しても、オバマは米軍を動かさないだろう。多くのアメリカ人にとって尖閣諸島はシリアよりさらに縁遠い場所だ。その存在すら知らないアメリカ人が大半である。オバマは「議会に承認を得る」と逃げ出し、その間に尖閣は中国に着々と実効支配を進められてしまう。

 日米同盟を安全保障の基軸とするにせよ、日本政府には外交・安保の独自の工夫が求められることになる。

 とはいえ、安倍にその仕事ができるかは甚だ疑問である。安倍もオバマと同様、軽率な発言で自らの行動を縛る愚行を繰り返してきた。

 例を挙げればきりがないが、島根県の制定した「竹島の日」を政府の公式行事にする、靖國神社を公式参拝する、といった目先の人気取りの公約を掲げてしまい、実現への困難にまで気が回らない。発言の一つ一つに軽率さが感じられる。

 9月8日のブエノスアイレスでのIOC総会でも同様だった。会見では今後のエネルギー政策について「原子力発電の比率は引き下げる」などと語った。7月参院選での自民党の公約ではまったく触れられていなかったことを、国際社会に約束してしまった。実現へのビジョンがあるとは到底思えない。

 IOC総会では2020年の東京五輪開催が決まり、日本中がお祭りムードに沸いた。しかし、私は浮かれた気持ちになれない。ブエノスアイレスでの安倍の“国際公約”は本当に守られるのだろうか?

 特に原発問題(放射能は完全にコントロールされていると安倍は言った。しかし、東京電力はそのようなコントロールはなされていないと言った)については、安倍の発言がウソだと見なされれば、それを理由にボイコットする選手や国家も出てきかねない。

※SAPIO2013年11月号

関連キーワード

トピックス

(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン