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ノーベル経済学賞の米教授 不動産バブル崩壊指摘で中国注目

 今年のノーベル賞の発表は日本人受賞者がいなかったこともあって、日本ではあまり盛り上がらなかったが、同様に受賞者がゼロだった中国では、経済学賞受賞者に大きな関心が集まっている。かつて中国の不動産バブル崩壊を予言したエール大学のロバート・シラー教授が受賞したためで、中国ではバブル崩壊の現実化に懸念が強まっている。

 シラー教授の専門は「行動ファイナンス」で、投資家の心理学的な性向を重視した投資理論の創始者。彼の学説を端的に説明すると、不動産価格や株価などの資産価格は短期的には予想は難しいが、長期的に見ると予測可能というもの。投資家の資産形成について、鋭く論証している点がノーベル経済学賞の選考委員会に高く評価された。

 そのシラー氏は4年前の2009年に広東省深セン市で行なわれた研究会で、中国の不動産バブルが崩壊するかどうかについて質問を受けた際、「わたしは上海市の不動産価格に関して非常に憂慮している。上海は、不動産価格が非常に高いニューヨークやロンドンに比べても、その不動産物件の価格は異常に高いから」と指摘した。

 そのうえで、「米カリフォルニア州のマンションや住宅価格は年収の8~10倍だが、中国の深センや上海の場合、少なくとも36倍にも達している。中国の不動産価格は20年間もこのような状態が続いている。アラブ首長国連邦のドバイは不動産バブルだったが、中国ではドバイと同じような社会的現象が起きているのは間違いない」と述べて、中国で不動産バブルが崩壊する可能性が高いことを示唆したのだった。

 この対策について、シラー氏は経済紙「21世紀経済報道」のインタビューに応じて、「中国政府は貧富の格差が拡大しないような対策をとることが必要だ。格差が拡大すればするほど、富裕層が不動産物件を買いあさって、不動産価格が上昇していくからだ」と説明した。

 また、貧富の格差拡大の防止策について、シラー氏は「中国政府は所得税の改正を行ない、富裕層から高率の税金を徴収し、貧困層の税金は免除すべき」と主張するとともに、「国有企業が独占する経済システムを改めて、民間企業を優遇して、自由競争を奨励することで、国有企業優先のいびつな経済構想を改革できる」と指摘した。

 中国では現在、上海自由経済試験区を創設して、国有企業優先の経済システムを改め、欧米並みの自由経済主義的手法を採り入れようとする改革が始まったばかりで、改革の歩みは遅れているとの指摘もある。

 このため、ネット上では「シラー教授を中国政府の経済政策顧問に迎えて、抜本的な改革を実行する必要がある」などとの書き込みが目立っている。

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