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サラリーマン作家に立ち塞がる壁 2作目出し次に繋げる苦労

2013.10.27 16:00

これまでに数多くのサラリーマンが文学賞を取り、作家デビューしたが、その後もコンスタントに書き続けるの

これまでに数多くのサラリーマンが文学賞を取り、作家デビューしたが、その後もコンスタントに書き続けるのは難しいものだ。本業があって忙しいうえに、そもそもオファーがそう簡単に来るものではない。まさに「立ち塞がる壁」ともいえるものだが、その壁を超えることも可能である。

昨年、文学賞への初投稿となる作品『ホテルブラジル』で第3回野性時代フロンティア文学賞(主催・フジテレビジョン・角川書店/応募総数881作)を受賞した古川春秋氏(36)は1年後の今年9月、2作目の小説『家族ドミノ』の発売にこぎつけた。一体どのように時間管理をしたのか、そして、小説の腕前は上がるものなのか。古川氏のコメントも含め、2作を比較し、サラリーマン作家が2作目を出す秘訣をさぐる。

まず、作品の内容についてだが、『ホテルブラジル』は、恋人に山の上でプロポーズをした男が結果を即答してもらえないところから始まる。そこに武器の密輸にかかわる男が加わり、その男を追跡する4人組、さらには4人組を追跡する2人組なども登場し、プロポーズ現場からそれ程離れていない場所にある「ホテルブラジル」に彼らは集結。冬は本来営業していないのだが、一人の従業員がなぜかそこにはおり、同ホテルを舞台に「ドタバタ暴力」ともいうべき混乱が延々と展開する。

選考委員の池上永一氏はその選評で「人間業とは思えない逆転劇の数々は暴風雨と津波が同時に襲来したような禍々(まがまが)しさで、技術云々さえ言わなければめちゃくちゃ面白い(だから技術云々は言わないことにする!)」「古川さんが技術を身につければとんでもないモンスター作家になるだろう」と作品を表現するほど、破天荒なストーリー展開で、「こんな状況あるかよ!」と時に思わせる。

同作の特徴は、モヤモヤしたものを常に感じさせる点だ。いや、イライラといっても良いかもしれない。それが故に「早くそこを明らかにしてくれよ!」という思いからページを進める手が止まらなくなるのである。そして、登場人物がいずれもロクでなしのような人物で、時に守りたくなり、「さっさと逃げろ、バカ!」などとツッコミを入れたくなるのだ。

で、第2作『家族ドミノ』である。読んだ上での「腕前の上達」に関して言うと、前述の「モヤモヤ感」がますます増幅している。だからページを進めたい気持ちが増えたのは一つの「上達」だろう。その上で、細かい問題解決が細切れに続き、ある程度のモヤモヤが少し「ガス抜き」されるのだ。もちろん作品の最大のテーマであるモヤモヤについては終了直前まで明らかにならない。この「モヤモヤ→ガス抜き→累積モヤモヤ感増加」は前作にはあまり見られなかったテクニックだ。

さらには、登場人物のロクでなし度合も上がっており、登場する3きょうだい(長男・長女・次男)が全員大金が必要だという状況もロクでもない。3人とも父親からは勘当されており、父が死亡したことをきっかけに集まるも、遺産のことしか考えていない――といった内容で、またもやドタバタ暴力が続くのである。

オチについては前作の方が驚きはあったものの、「章タイトルを登場人物の名前(ないしは「長男」「長女」「次男」など)にし、その人物の視点で語る」という分かりやすさ、「なぜか会話の文字数は揃える」といった美学が一貫したことも含め、「腕前」は上達しているのではないか。

この1年、サラリーマンを続けながら古川氏は毎朝5時~6時に起きて、出勤前に1~2時間、帰宅してから食事や風呂などを済ませてから1~2時間程度執筆していたという。毎日2~4時間を割いていたわけだが、これは同氏によると「睡眠とプライベートの時間を削って書く、という感じです」だという。

小説を書く腕前は果たして上がるのか。そして、2作目は1作目を超えられるのか? という質問に対しては「1作目が初めて書き上げた小説だったので、それに比べれば幾分かは巧くなっていると思います。慣れというか、学習というか。産みの苦しみは相変わらずですが……。とりあえず書き上げるスピードと作品の枚数では超えられました」と回答しており、確かにテクニックなどは上達するようだ。

ここで古川氏が強調したのが「スピード」だが、出版社から二作目は1年以内に出したいと言われていた。選考委員がそこまで期待した作家なだけに、第一作の読者の気持ちがアツい内に出す必要があったのだろう。結果的に1ヶ月遅れで出版にこぎつけられたことに関しては出版社からは合格点を与えられたという。

そして、「2作目は書けるのか?」という質問に対してはこう答えた。

「周囲からのプレッシャーは無かったのですが、自分自身にプレッシャーを感じていました。1作目が初めて書いた小説だったので、正直2作目が書けるかどうか不安でした。前作に比べて圧倒的に時間がなかったので、時間を作ることと書くペースをつかむことに苦労しました」

古川氏はデビュー作の段階ですでに2作目の単行本化を求められていた。そして最もプレッシャーの高まる2作目を、出版社の目指すスケジュールで書きあげた。サラリーマン作家(及び目指す人)がここまで到達するのは「一抜けた」状態ともいえそうだが、同氏の仕事関係者はあまり驚かない。

「あの人、時間管理とかプロジェクトの進め方上手ですから。あと会議での物事の通し方とか、作中の悪いヤツに似ていて、仕事がそもそもできる人だから『デビュー作で期待される』『2作目で出版社の要求に応える』ができたのではないでしょうか」

 作家は発想や筆力も重要だが、これに加え、サラリーマンとしての管理能力や責任感も重要だということだろう。

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