芸能

いいとも終了で「笑っていられない時代」到来かと危惧する声

 名物番組「笑っていいとも」の終わりは、ひとつの時代の終わりである。笑っていられない時代が、すぐそこにやってくる。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が、「『笑っていいとも!』というタイトルが教えてくれた究極の大人力」について語る。

 * * *
 1982(昭和57)年10月にスタートした『笑っていいとも!』が、来年3月で終了してしまいます。寂しいですが、ここでしんみりしちゃいけません。『笑っていいとも!』が、そのタイトルや中身を通じて私たちに教えてくれたのは、どんなときも、どんなことも「笑っていいんだよ」ということ。人生にはいろいろな出来事がありますが、無理にでも笑ってしまうことができればどうにかなるし、結局はそうやって乗り越えるしかありません。すべてを笑おうという姿勢は、大人として身に付けておきたい、いわば究極の大人力だと言えるでしょう。

 大げさに言えば、戦後の日本は『笑っていいとも!』以前と『笑っていいとも!』以後に分けられます。番組が始まった1982年の日本は、どんな社会だったのか。自分が当時何歳だったかを計算しつつ、振り返ってみましょう。私事で恐縮ですが、自分は大学1年生でした。2年生になった春の新歓コンパでは、全員で「世界に広げよう○○寮のワ!」と叫んだり、「飲んでいいかな?」「いいともー!」を連呼したりしていた記憶があります。

 1982年の大きなニュースとしては、日航機が「逆噴射」で羽田沖に墜落、三越の社長解任劇、北炭夕張炭鉱の閉山、東北・上越新幹線の開業(大宮発)などがあります。持ち帰り弁当や紙おむつ、レンタルビデオ、家庭用カラオケが登場したのもこの年でした。

 流行語は「イマい」「ルンルン」「ひょうきん」「なめたらあかんぜよ」「ほとんどビョーキ」など。西武百貨店の「おいしい生活」という広告コピーも話題を呼びました。バブルの到来はまだまだ先でしたが、兆しのようなものは随所に見受けられます。

 忘れてはならないのが、『笑っていいとも!』の前に同じ枠で2年間放送されていたバラエティ番組『笑ってる場合ですよ!』のこと。B&B(島田洋七・洋八)のふたりが司会を務め、ザ・ぼんち、ツービート、紳助・竜介らが活躍しました。

 その頃は、まだまだ笑うことに対して、不謹慎だとかふざけてるといったマイナスのイメージが強かった時代。この番組が堂々と『笑っている場合ですよ!』と言い切ってくれたことで、日本人の意識が少し変わった気がします。そんなベースがあったからこそ、一歩進んだ『笑っていいとも!』という“励まし”を素直に受け止められたに違いありません。

 番組が来年の春で終わる昨今の日本は、偶然でしょうけど、しかめっ面のほうが偉いみたいな雰囲気が蔓延しています。困ったことを笑ってやり過ごそうとしたら「笑ってる場合じゃない!」「笑ってたらよくないとも!」と言われそうです。物心ついてからの大半を『笑っていいとも!』を横目に見ながら過ごした私たちとしては、番組が終わったあとも、何でも笑い飛ばそうという究極の大人力をしっかり受け継いでいきましょう。

 ……あっ、もしかして、単なるこじつけに見えたらすいません。鼻で笑ってください。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン