国内

60年前の赤ちゃん取り違え裁判 弟たちの「疑念」が爆発した形

 60年前、出生直後に別の新生児と取り違えられ、本来と異なる人生を余儀なくされたとして、トラック運転手・伊藤武史さん(仮名、60才)と3人の実弟は取り違えた病院・賛育会病院側に賠償を求め提訴。東京地裁は11月26日、3800万円(武史さんに3200万円、実弟3人に600万円)の賠償を命じた。この裁判について、とある社会部記者はこう話す。

「実は裁判が起きるきっかけとなったのは、2008年に3人の弟が武史さんと取り違えられた竹田直紀さん(仮名、60才)を相手取り、両親と直紀さんが親子ではないことを認めるよう提訴したことでした」

 1999年に母が、2007年に父が亡くなったが、その際の遺産分配をきっかけに、弟らがそれまで兄に抱いていた“疑念”を爆発させた形だった。

「3人の弟はお父さんが亡くなった際に、長年の疑問であった直紀さんの血縁問題を明らかにするため、直紀さんに無断で彼のたばこの吸い殻と亡き父の毛髪でDNA鑑定を行ったんです。弟たちはその結果をもって裁判に臨み、今度は直紀さん合意のもと、再度鑑定を行ったのですが、やはり生物学上の親子である可能性はほぼ0%であることがわかったんです」(前出・社会部記者)

 一審では弟たちの言い分が認められ、血縁関係がないことが認定された。だが、高裁、最高裁では、生まれた時から一緒に暮らしていることを重視し、「育ての親との間に親子関係が存在しないとはいえない」との判決を下された。

 だが、それでも弟たちは諦めなかった。真実の兄を捜すため、賛育会病院の分娩台帳を検証し、調査会社などに依頼して、2011年秋に武史さんを見つけ出したのだ。一方で弟らは、直紀さんに対し、相続された遺産を取り戻すための裁判を起こした。

「父親の遺言では直紀さんの取り分が非常に多かったんです。遺言は直紀さんが実子であることを前提として父親が遺したもの。実子ではないことがわかっていたならば、そのような内容の遺言にはならないというのが弟たちの言い分でした。同時に弟たちは1999年に亡くなった母親の遺産相続分についてもやり直しを求めているのですが、裁判でのやり取りは、激しいものとなりました」(前出・社会部記者)

 その理由について、一家を知る人物は言う。

「なんでも、お産の時に用意していた産着とは違う産着を、沐浴を終えた直紀さんが着ていたそうで…。お母さんはそれがずっと心に引っかかっていたみたいなんです…。それに直紀さんの容姿や性格が他の兄弟と似ていないことを、近所の人や親類からよく言われていたんです。お母さんは決して口に出すことはありませんでしたが、“直紀は自分の子供ではないかもしれない”と疑っていたかもしれません」

※女性セブン2013年12月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン