国際情報

井沢元彦氏 日韓が歴史認識を巡って争う小説を1991年に刊行

 韓国で反日運動が盛り上がりを見せているが、今から20年以上に、現在を予見するような長編小説を発表したのが、本誌で『逆説の日本史』を連載中の作家・井沢元彦氏だ。その作品『恨の法廷』は、韓国の反日の根底に「恨」の感情があると喝破した作品。まさに“予言”と言って良い、先見性に満ちた作品の内容を紹介しよう。

 * * *
 韓国人とのトラブルから、交通事故死したはずの主人公が目覚めた場所は、法廷だった──死後の世界に出現した法廷で、日本、韓国双方の代表が、歴史認識を中心とする、日韓で対立する様々なテーマについて議論していくディスカッション・ドラマ形式の小説作品。

 中国の古代の皇帝(天帝)が裁判長を務める。主任弁護人ないし主任検事役の架空の人物に加え、日本側の立会人である聖徳太子、韓国側の立会人である檀君(朝鮮民族の始祖とされる伝説的な神人)を始め、親鸞、道元、上杉鷹山、太宗武烈王(新羅王。唐と連合して百済を滅ぼし、朝鮮半島統一の基礎を固めた)、李退渓(韓国の朱子とも讃えられる16世紀の大学者)など、様々な歴史上の人物が証人役で登場する。

 法廷は、「日帝三十六年」(日本統治時代の36年間)を呪詛する韓国側の激しい非難から始まり、日本側が証拠、証言と論理を積み重ねて反論するという形で進み、その議論の過程で日韓双方の文化の本質が明らかにされていく。

 朝日新聞が、戦時中の慰安所の設置に旧日本軍が「関与」したことを示す資料が「発見」された、と大々的に報じたのは1992年1月。慰安婦に関して軍の「関与」や「強制性」を認めたいわゆる河野談話が発表されたのは1993年8月である。

 一方、本書が日本経済新聞社から刊行されたのは1991年2月(1995年9月に徳間文庫版刊行。ともに絶版)。まだ「従軍慰安婦問題」や「歴史認識問題」、あるいは「竹島問題」などは、激しく対立する日韓の外交問題として浮上していなかった。

 だが、その時点──今から20年以上前に書かれたにもかかわらず、本書が提示した争点や日本側の反論は少しも古くなっていない。それは本書に先見の明があったことを物語ると同時に、いまだ問題に決着がついていないことも示している。その意味で、不幸な事態はいまだ続いていると言わざるを得ない。

※週刊ポスト2013年12月20・27日号

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン