――プロレスラーとしての適性は、どのような基準で判断されているのですか?
高木:DDTでの採用についてはキャラクターと運動神経をみますが、スクワットを何回できるかというような体力テストはしません。たとえば、反復横跳びを1分間やらせて反射神経を確かめます。努力しても、なかなか変わらない部分ですからね。
そして、リング上でなんでも得意なことをひとつやってもらいます。カマキリの物まねをした人もいれば、とんぼ返りを何往復もして運動神経の良さをアピールした人もいます。ここでどんなことをするかで人となりがわかります。
――昔の漫画でみたような、薄暗いイメージとはかけ離れていますね。
高木:いまのプロレスはとにかく明るいですよ。コスチュームも黄緑やオレンジなど、蛍光色を使った明るいものが増えています。DDTではなるべくリング上が明るくなるように照明も工夫しています。
基本的にベビーフェイス(善玉)とヒール(悪玉)がいる構図は変わりません。違うところといえば、何らかの形で多幸感、ハッピーエンドな感じを出すようにしています。昔は、後味が悪い終わり方をしてもテレビ番組で行く末を追える安心感がありましたが、DDTには毎週放送される地上波テレビ番組がありませんから。
――プロレスを見ていた人たちが離れていった理由のひとつに、ずっと見続けていないと分からなくなってしまうこともあげられると思います。
高木:もともとDDTは『戦う連続ドラマ』と呼ばれていました。でも、会場で集めるアンケートやネットでの声をきくと『一回見なくなったら、もう分からないよね』というものが多かった。お客さんを逃していますよね。だったら、その都度ごとに凝縮したほうがよいと考えて一話完結的な興行を多くしています。最近のドラマにも一話だけでも楽しめるものが多いと思いませんか。エンターテインメントとしてはプロレスも同じです。
――プロレスはショービジネスとして、まだ広がる可能性が大きいのでしょうか?
高木:EXILEのように誰が見てもかっこよくて「俺もあの舞台に立ちたい」と思わせるような存在にならないと。もっと総合的なエンターテインメントとしての楽しみ方ができるはずだし、若い世代がどこまでスターになるかでプロレス界全体が変わってきますよ。DDTでいえば飯伏、新日本プロレスだと、まだ26歳と若いオカダカズチカ君の成長が楽しみです。
●高木三四郎(たかぎ さんしろう):1970年生まれ。大阪府出身。株式会社DDTプロレスリング代表取締役社長で現役プロレスラー。1995年デビュー、1997年DDTプロレスリング旗揚げに参加、2006年より現職。「文化系プロレス」と形容される、従来のプロレス概念を打ち破るエンターテインメントを表現し続けるプロデューサーでもある。DDTプロレスは1月26日に後楽園ホール大会「Sweet Dreams! 2014」を開催。