ビジネス

「知らんと言え」のささやき女将 助言封印で次男の店大繁盛

 狼狽する息子の隣で囁く母の声は、高性能のマイクが一言漏らさず拾っていた。音量としては「最も小さな失言」だが、謝罪会見史に最大のインパクトを残した。「頭が真っ白になったと言え」「何も知らんと言え」──。

 吉兆グループのひとつ『船場吉兆』の“ささやき女将”こと湯木佐知子氏。2007年、食材の産地偽装や食べ残しの使い回しが発覚すると、長男で専務の喜久郎氏と釈明会見に臨んだが、厳しい質問に喜久郎氏は言葉に詰まってしまう。

 すると佐知子氏は長男に冒頭の言葉を耳打ち。“腹話術”はマイクを通して全国ニュースで流れてしまった。事件の翌年に同店は廃業し、佐知子氏は自己破産した。だが、当時、同店の取締役だった次男の尚治氏が、2011年に大阪・北新地で料亭を出店した。

 どん底からの復活は尚治氏の腕の確かさを示す何よりの証拠だが、「吉兆ブランドを守る」という使命感も再起の後押しになったのだろう。とすると、女将も息子の吉兆再興を隣で“サポート”しているのか?

 客として「あの女将さんも出てるの?」と尋ねると、「ええと、たまに……」と、要領を得ない返答。そこで、尚治氏に訊いた。

──お母様は元気ですか?

「はい、元気ですよ。でも、母は一切答えないようにしているんです。もう商売もしておりませんから」

──佐知子さんもお店のアドバイスをしていると聞きますが?

「今はそういうことはしておりませんので。他の人を取り上げられたほうがいいと思いますよ……」

 終始丁寧な口調ながら、母の関与を頑なに否定する尚治氏だが、「船場吉兆時代のお客さんが戻ってきているのは、先代女将の口添えもあると思う」(大阪の飲食店関係者)との声も。そんな“ささやき”なら、誰も目くじらを立てないと思いますが。

※週刊ポスト2014年1月17日号

関連キーワード

トピックス

神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
イセ食品グループ創業者で元会長の伊勢彦信氏
《小室圭さんに私の裁判弁護を依頼します》眞子さんの“後見人”イセ食品元会長が告白、夫妻のアパートで食事した際に気になった「夫としての資質」
週刊ポスト
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト