すぐさま図面の制作に取りかかった。キャップを捻ると、キャップ内部の突起が、お茶の粉末を収納している容器の底を突き破って、粉末茶をペットボトルの中の水に振り落とす──。

 寄田が考え出したこのアイデアは、同社初のペットボトル緑茶飲料『本茶』(330ml入り200円)に採用され、後に「フレシエ(FRESH!e)・キャップシステム」と名付けられた。

 保存料・香料不使用の『本茶』の味には自信があった。だが、大手メーカーがひしめく緑茶市場で大きなシェアを獲得することはできなかった。

「悔しかったですよ。でも、キャップの開発にこんなに苦労したのだから、決して諦めたくなかった」

 社長も同じ思いだった。自らの指示を必死の思いで実現させた寄田の画期的なアイデアを、このまま埋もれさせてしまうのは、あまりにも忍びない……。

 同社が出した答えは、「高級化」だった。一般のペットボトル飲料とは一線を画した高品質でデザインコンシャスなボトルを使用。キャップには、八女(やめ)・星野村伝統の本玉露(ぎょくろ)製法で作られた玉露や抹茶の粉末を密封する。それを可能にしているのは、寄田が開発した「フレシエ・キャップシステム」である。

 2013年4月、高級化路線第一弾の『遥香 抹茶』が、新装した東京・歌舞伎座で限定販売された。1本500円という価格にもかかわらず、連日完売を記録。続いて販売された老舗百貨店でも完売が続いた。

 10月には第二弾『遥香 玉露』も発売され、こちらも好調に売り上げを伸ばし、半年間で計6万本のヒット商品となったのである。この冬は、お歳暮ギフトとしてもひっぱりだこだった。

(文中敬称略)

■取材・構成/中沢雄二

※週刊ポスト2014年1月17 日号

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