最近、妙にムーミンを目にする機会が多いと思った人もいるはず。それは、今年がムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンさんの生誕100周年で、来年が“ムーミン誕生70年”にあたるため、世界中で大規模な展覧会やイベントが目白押しだからなのだ。
1990年に制作された日本のアニメ『楽しいムーミン一家』(テレビ東京)は“故郷”のフィンランドのみならず、世界約100か国で放映。子供向けのかわいくて無邪気な童話と思われがちだが、トーベさんが描く原作は、文章や絵も、決して子供だけを対象にしたものではなかった。
ムーミン谷へ彗星が衝突するかもしれないエピソードや、ムーミンパパの放浪癖など、ユーモラスでありながら、どことなく暗さをたたえ、政治や社会風刺、不条理で哲学的な描写も多い。むしろ、大人が読んで考えさせられる内容なのだ。
登場するキャラクターも個性派ぞろいで、その意外なエピソードを知ったら、改めてムーミンを読みたくなるはず!
まずムーミンは、カバではない。トロール(想像上の生き物)の一種。原形は、作者トーベさんが10代のころに、別荘のトイレに描いた醜いトロールの落書きだ。
“初代ムーミン”は水彩画でデビュー。大きな鼻と耳、赤い目をした、黒いシルエットの怖い生き物だった。作者によると、「電話帳ぐらいの大きさ」(どこの国のものかは、不明?)だが、時に缶詰に入ってしまうほど小さかったり、人間ほどの大きさだったり、まちまち。作者は断定するのを好まなかったとか。
ムーミンパパもかなり個性的。思い出の記によれば、「ムーミン捨て子ホーム」で育つ。殺風景で規則が厳しく、食事や入浴時間はもちろん、おじぎをする時のしっぽの角度にまで決まりがあった。家族のことはとても愛しているが、ふと、自分の平和な生活に違和感をおぼえ、時々家出をしてしまう。
スナフキンは、ムーミンの親友で自由と孤独を愛するボヘミアン。ギターを奏でて歌うイメージがあるが、使っているのはハーモニカ。作曲を邪魔されるとイライラする。また、「○○禁止」、「~するべからず」というのが大嫌いで、公園などの立札はひとつ残らず引っこ抜いてしまう。
かわいい外見のニョロニョロだが、実はムーミン谷の住人にとっては嫌悪と恐怖の存在。常に群れをなして行動するが、必ず奇数で動く。地平線をめざし、みんなで船を漕ぐ放浪者なのだ。夏至祭の前にまいた白く発光する種から生まれ、生まれたては特に強い電気を帯びている。稲妻がえさで、エネルギーを充電。触ると感電するので要注意。
※女性セブン2014年2月20日号