ライフ

過酷な非正規雇用 職場では「派遣さん」としか呼ばれない

 アクリフーズの農薬混入事件で逮捕された阿部利樹容疑者(49才)も非正規雇用者で、動機について待遇への不満を口にしていたが、非正規で働く人たちの置かれている現状は、実に過酷だ。派遣社員として働く40代のある女性は次のように証言する。

「うちの工場では、正社員は会社から支給された制服を着ています。私たちはそれに似たデザインの作業着を、レンタル料金を払って借りて着ているんです。

 社員食堂も使えますが、同じメニューでも、正社員は300円で、非正規の私たちは倍額の600円。300円という差額が示すこの隔たりに、言いようのないコンプレックスを感じます。細かいことですけど、でも、細かいことでも、積み重なると、本当に堪えるんです」

 同じく派遣社員として働く30代の女性も、自分の存在を否定されると感じることがあるという。

「職場では、決して名前では呼ばれず『派遣さん』と呼ばれます。あなたには代わりがいくらでもいます、と言われているみたいで、何度もそう呼ばれるうちに、自分が一体誰なのかわからなくなってきて。若い正社員から『派遣ちゃん』と呼ばれたときには、耳を疑いました。自分を殺さないと苦しいです」

 契約社員として働く30代の女性は、さらに悲惨な現状を吐露する。

「もともとは派遣社員として、時給で働いていたんです。残業すると残業代が発生するから、むしろ定時で帰されるような状態でした。それが、契約社員になって月給制になった途端、それまでの何倍もの仕事を背負わされるようになりました。『もう派遣じゃないんだから』というようなことを言われて、終わらない仕事は休日も出勤してこなします。

 それでも、ふと気を抜いて『私は一生懸命働いている』という雰囲気を出すとアウト。『契約のくせに偉そうに』といった言葉が聞こえてきます。頑張っても、なんの見返りもない。一体何のために働いているのか、何のために生きているのかもわからなくなります」

※女性セブン2014年2月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン