国際情報

韓国の平均年金月額支給額は4.4万円 生活保護の4.7万円下回る

 韓国で一般国民を対象にした国民年金制度が導入されたのは1988年。当初は「従業員10名以上の事業所で働く労働者」が対象で、国民皆年金が実現したのはわずか15年前の1999年だ。

 国民年金は「事業所加入者」(企業就労者)と「地域加入者」(自営業者など)に大別され、前者は保険料を労使で折半。後者は全額個人が支払う。専業主婦などの任意加入も可能だが、韓国国民年金研究院による昨年の調査では国民の約4割がいずれの年金にも未加入だった(15歳以上の世帯で所得のある者を対象とした調査)。

 制度導入当時、基準所得額(日本の標準報酬月額に相当)の3%だった保険料率は段階的に引き上げられ、現在は一律9%となっている。また現行の受給開始年齢は60歳だが、2033年までに65歳まで引き上げられることが決定済みだ。韓国の就労者の実質的な定年は50歳代。受給開始までの数年間、場合によっては10年以上も無収入になる恐れがある。

 それだけではない。税金を投入しないため、年金支給額も減らされ続けている。40年間加入した場合の給付額の所得代替率(現役時代の収入に対する割合)は当初の70%から60%(1998年)、50%(2007年)と引き下げられ、今後も毎年0.5%ずつ引き下げて2028年に40%にすることが決まっている。

 昨年、国民年金を管理・運用する国民年金公団(NPS)が1955~63年生まれ(ベビーブーム世代)の年金加入状況を元に、彼らが将来的に受け取る年金を試算。1人当たりの平均受給月額は約46万ウォン(約4万4000円)となり、生活保護の現金給付月額約49万ウォン(約4万7000円)を下回った。

 一方で、この世代の実に50.8%が年金未加入という調査報告もある。被保険者の配偶者を対象とする「第3号被保険者」のような制度がなく、女性の任意加入者は少ない。なお、最低加入期間の20年を満たさない場合は受給額を大幅減額されるため、手にする金額は日本円で数千円ということもある。

 それでも、年金を受け取れる世代はまだ恵まれている。韓国では制度開始からわずか25年余りで早くも年金制度崩壊の危機が叫ばれているからだ。亜細亜大学アジア研究所・奥田聡教授が語る。

「韓国の少子高齢化は深刻で2026年には老齢人口比率が20%の超高齢社会になります。現在、現役世代6人で高齢者1人を支える世代間扶養比率が30年後には1.6人で1人を支えることになる。今後、保険料率と受給年齢を段階的に引き上げたところで将来的な制度の維持は極めて難しい。政府は年金財源の枯渇を2060年ごろとしていますが、かなり甘い見通しと言わざるを得ません。政府は税金を投入する余裕もない」

※SAPIO2014年3月号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン