スポーツ

浅田真央 失言した森元首相へのコメントは大人力で金メダル

 ソチ五輪は多くのアスリートの大人力を目の当たりにする機会でもあった。もちろん金メダルはあの人だ! 大人力コラムニストの石原壮一郎氏が熱く語る。

 * * *
 「魂がこもった演技」とは、まさにああいう演技のことを言うのでしょう。ソチ五輪のフィギュアスケート女子のフリースケートで浅田真央選手が見せた演技、そして演技が終わったあとの感極まった表情は、テレビの前の私たちの心を激しく揺さぶりました。

 ショートプラグラムは、自ら「どん底」と表現するほどの不調に終わりましたが、そのときに話題を呼んだのが元首相で、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を務める森喜朗氏の「あの子は肝心なときにいつも転ぶ」といった発言。本人もあれこれ弁解していますが、悪気があろうとなかろうと、失礼この上ないことは確かです。

 そんな無神経な発言に対して、当の浅田選手はそれはそれは素晴らしい反応を見せてくれました。2月25日に外国特派員協会で記者会見にのぞんだときのコメントは、いわば言葉のトリプルアクセル、鋭い切り返しのサルコウ、たくまざるユーモアのトゥループでした(すいません、用語の意味はよくわかってません)。もし大人力フィギュアの部門があったら、文句なしに金メダルに値する華麗な舞いだったと言えるでしょう。

 「アスリートとして、オリンピック選手として、森元首相の発言をどう思いましたか? オリンピック委員会の会長としてふさわしいものだったのでしょうか?」という海外メディアからの質問に対して、浅田選手はこう答えます。

「私自身、それを聞いたときは終わったあとだったので、『あぁ、そんなこといっていたんだぁ』というふうには思ったんですが。まぁ人間なので、それは失敗することもありますし、『しょうがない』と言えば、そうではないと思うのですが、やはり自分も失敗したいと思って失敗しているわけではないので、それはちょっと違うのかなとは思ったんですが。でも、森さんはそういうふうに思ったんではないかと思いました」

 森元首相を批判したり非難したりする言葉は、ひと言も言っていません。あくまで自分の気持ちとして「ちょっと違うのかなと思う」と言うことで、抗議のニュアンスを雄弁ににじませています。「でも、森さんはそういうふうに~」のくだりも見事。フランスの哲学者・ヴォルテールは「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」と言っています。これは民主主義の基本原則を端的に示す言葉として有名ですが、浅田選手は計らずもこの精神の大切さを教えてくれました。

 そしてクライマックスは、やはり海外メディアから「森さんは、あと5年間会長を務めるわけですか、日本人はそれに耐えられると思いますか?」という答えづらい質問に対する返し。「私は、今べつになんとも思っていないですけど、たぶん森さんは、ああいう発言をしてしまったことについては、今後悔しているんじゃないかなと少しは思っています」とニッコリ笑いながら勢いよくジャンプし、見事な着地を決めました。

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン