コンビニおでんから匠の技まで、練り物関係の取材から執筆まで一人でこなす『水産煉(ねり)製品新聞』の土井雄弘編集長は、これまで数紙の業界紙を渡り歩いてきた。
「弊紙はかまぼこをメインに扱う新聞です。私がねりもの業界にかかわるきっかけとなったのが、『かまぼこ新聞』への転職でした。そこから独立して立ち上げたのが『かまぼこ通信』。そして、現在の新聞に移りました。同じかまぼこの業界紙なので、古巣の2紙にはもちろんいまでも目を通します」
両紙で培った人脈こそが土井編集長の財産。「電話一本で取材できる人もたくさんいる」ネットワークがあるからこそ、一人で『水産煉製品新聞』を支えられるのだ。同紙が注目しているのは、「コンビニおでん」だ。暦の上ではすっかり春だが、この季節になってもコンビニおでんは依然人気がある。
「ねりものを多く使うおでんはかまぼこ業界と切っても切れない関係にあり、おでんを応援することで業界も活気づく。コンビニおでんの人気は大歓迎です。静岡おでん、名古屋おでんなどのご当地おでんブームにも、業界の人間がかかわっているんですよ」
だが喜ばしい半面、気がかりなこともある、とため息をつく。
「コンビニのおでんは一年中出回っていますよね。いつでも安くて手軽に買うことができる。その影響で、昔ながらのおでん屋さんが潰れていってしまっているんです。致し方ない流れではありますが、心苦しい」
業界の今後への懸念は他にもある。
「各メーカーは少しでも安く大量に生産しようと、機械任せでかまぼこを作るようになってしまっている。味が落ちることも問題ですが、このままでは、かまぼこをきちんと作れる人がいなくなってしまう。日本の伝統食がまた一つ消えてしまうことにもなりかねません」
後継者不足はかまぼこ業界に限ったことではないが、匠の技を後世に残すためにも、今後はできる限り職人の取材をしたいという。
※週刊ポスト2014年3月14日号