戦前、戦中派の重鎮のほとんどが政界を引退し、安倍内閣で戦前生まれは73歳の麻生太郎・財務相のみ。“軸”が失われた自民党は、重鎮たちの眼に危うく映る。与謝野氏が続ける。
「確かに、自民党は結党以来、『自主憲法制定』を掲げてきた政党です。しかし、それは、他の国の人間が書いた憲法なんてこんな恥ずかしいことはないという形式論、スローガンにすぎない。じゃあ、明治憲法はどうだったか。ヨーロッパから御用学者を招いて、民法、刑法から憲法まで原案を書いてもらったわけです。誰が書いたかより『何が書いてあるか』が大切でしょう。
中には日本国憲法の9条はアメリカが書きなぐったように言う人がいますが、全米から優秀な学者たちが集められ、ウェストファリア平和条約(※注)を研究してつくった。そんなに馬鹿にするようなものではありません。ましてや憲法改正手続きを定めた96条改正はゲームの途中でルールを変えるようなもので、やるべきではない」
【※注】ヨーロッパ全土を巻き込んだ三十年戦争(1618~1648年)を終結させた条約。ドイツとフランス・スウェーデンとの間に結ばれた。
※週刊ポスト2014年3月21日号