また、今回の消費税の増税法案が「社会保障と税の一体改革」と命名されていることが示すように、増税の目的は社会保障費の捻出とされています。しかし、消費税が果たして社会保障費の捻出となり得るのか。これも消費税導入からの経緯を踏まえると疑問を投げ掛けざるを得ません。
消費税を採用してから20数年あまり、一向に財政再建にはなりえなかったという証拠は財務省が公表している「一般会計における歳出・歳入の状況」を見れば一目瞭然です。
消費税導入をした年を起点として、歳出(社会保障費など政府から出ていくお金)は増える一方で、歳入(税金なご政府に入ってくるお金)は減少が始まっています。
さらに、消費税を引き上げた1997年以降は一段と歳入と歳入の差が拡大しています。消費税だけで財源確保しようと思っても無理がある、というのがありありとわかってしまうのです。
つまり、「消費税だけで社会保障費を捻出するような財源確保」の発想にそもそも限界があるのです。増税をする前に、そのあたりからまず分析をし直す必要があるのではないではないかと当局には申し上げたいと思います。
【岩本沙弓/いわもと・さゆみ】
経済評論家、金融コンサルタント。1991年から日米豪加の金融機関ヴァイスプレジデントとして外国為替、短期金融市場取引業務に従事。現在、金融関連の執筆、講演活動を行うほか、大阪経済大学経営学部客員教授なども務める。近著に『アメリカは日本の消費税を許さない』(文春新書)、『あなたの知らない日本経済のカラクリ』(自由国民社)などがある。