国内

安藤忠雄氏「文化の象徴だった建築が、経済に必要な建物に」

 建築家・安藤忠雄氏──このインタビューの取材会場となった東京・丸の内にあるホテルの大きな窓からは、近年次々に建設された高層ビル群が見えた。丸の内に限らず、いま東京中、日本中が建設ラッシュに沸き、最新の設備を備えたビルやマンションを造るクレーンが林立している。「建築は時代のシンボル」と語る安藤氏にはどう映るのか。

──昨年12月、フランス芸術文化勲章の最高位「コマンドゥール」が贈られました。受章の席で「建築を通してこれからも世界と交流したい」と語っていましたが。

安藤:私は大阪生まれの大阪育ちです。事務所(安藤忠雄建築研究所)もずっと大阪。軸足は常に日本の大阪です。しかし、すでに事務所収入の80%は海外です。アメリカや中東、イタリア、中国……私の「仕事場」は世界中に広がっています。建築を通して世界と関わっています。

 私は建築を通して世界を考え、建築を通して経済を見て、建築を通して人を見る。大阪に軸足を置きながら世界と交流するということ。この姿勢は崩さずにいきたいと思っています。

<安藤忠雄(あんどう・ただお)。1941年、大阪府生まれ。東京大学名誉教授。独学で建築を学び、1979年「住吉の長屋」(大阪市住吉区)で日本建築学会賞受賞。ほか代表作に大阪府茨木市の「光の教会」、香川県直島の「地中美術館」、「東急東横線渋谷駅」など。日本芸術院賞、国際建築家連合ゴールドメダルなど受賞多数。2010年文化勲章。著書に『仕事をつくる』(日本経済新聞出版社刊)、『連戦連敗』(東京大学出版会刊)など>

──ここ丸の内でも、あちこちで再開発が行なわれています。アベノミクスによる景気回復の象徴と言われるこの光景を建築家の目でどう見ますか。

安藤:建築はまさに「時代のシンボル」です。建築を見ると時代が浮かび上がってきます。私は22歳の時(1963年)に日本一周の旅に出ました。この国の建築を自分の目で見てみたいと思ったからです。この旅で最初に驚いたのが建築家・丹下健三氏の代表作である香川県庁舎旧本館(現東館)です。

 日本の伝統的な様式を彷彿とさせながら、打ちっ放しのコンクリートを用いた斬新なデザイン。この建物が1958年にできたこと自体、戦後日本の底力の表われでしょう。そうした建築の登場は戦後の奇跡的な復興と重なっています。

 1964年の東京五輪から6年後の大阪万博まで。この頃は日本人全体に「目標」があり、向上心があった。特に東京五輪に際して丹下氏が手がけた国立代々木競技場は、この時代を象徴する建築です。遠くから見ると寺院や神社のような雰囲気も持ち、それでいて非常にモダン。世界中から高い評価を集めました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
TOKIOの国分太一
「テレビ局内でのトラブルが原因ではないか」TOKIO国分太一が重大なコンプライアンス違反で『鉄腕DASH』降板へ…ざわつく業界関係者ら
NEWSポストセブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
殺人容疑にかけられている齋藤純容疑者。新たにわかった”猟奇的”犯行動機とは──(写真右:時事通信フォト)
〈何となくみんなに会うのが嫌だった〉頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の知られざる素顔と“おじいちゃんっ子だった”容疑者の祖父へ直撃取材「ああ、そのことですか……」
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン