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健康基準厳格化で「治療を受けるべき」受診者が10倍に増えた

 人間ドック学会が4月4日、血圧やコレステロール値、肥満度などについて行なった大規模調査の中間報告を発表、現在の健康診断で採用されている健康基準値と大きく差がある「新基準値」が公表された。

 例えば血圧の場合、これまでは上(収縮期血圧)が130以上、下(拡張期血圧)が85以上なら「血圧が高い」と診断されてきた。それが、新基準値では大幅に緩和され、上は147まで、下は94までは正常値であるとされた。いわゆる「悪玉コレステロール」とされてきたLDLコレステロールで、現基準では120未満が正常とされたが、新基準では男性の上限が178、高齢女性では190まで拡大された。

 基準値を緩和し、“健康な人”を増やす方向は、いまや世界的な潮流だ。アメリカでは米国内科専門医認定機構財団が主導する「Choosing Wisely(賢い選択)」と呼ばれる「無駄な医療行為を追放するキャンペーン」が全国的に展開されている。

 同財団が権威ある学会に呼びかけ、無駄な治療や検査をピックアップして国民に公開するという画期的な取り組みだが、背景にあるのは国民の医療に対する不信と国家財政を圧迫する医療費増の問題だ。アメリカでは手術・投薬ありきの医療に対する国民の不満が近年高まっている。さらに高齢化の進展で、2017年には医療費がGDPの20%に当たる4兆3000億ドルに達すると予測されている。

 アメリカが直面する状況は日本でも同じ。医療費は、2007年に33.4兆円、2010年36.6兆円、2012年38.4兆円と年間1兆円単位で増加の一途。その原因は、巷間でいわれている高齢化ばかりではないというのは、東海大学名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所長である。

「2008年にメタボ健診(特定健康診査)が始まって以降、日本の健康基準値はどんどん厳しくなり、加齢による変化以上に医療費が急増した。

 例えば、血圧の要医療基準値は20年前まで40歳以上対象の住民健診では最大血圧が180だったものが、昨今のメタボ健診では140以上が『受診勧奨』と診断されるようになった。その結果、40~80歳の人を見ると、1987年には『要医療』の診断基準である血圧180以上の人は170万人しかいないが、特定健診の『受診勧奨』に当たる血圧140以上の人は1510万人にも達する」
 
 診断基準の厳格化で“治療を受けるべき”とされる受診者が10倍に増えてしまったのだ。これでは治療費が急増するのも当然である。

※週刊ポスト2014年5月2日号

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