芸能

深田恭子 貧困扱うNHKの社会派ドラマでは違和感ありと識者

 貧困や孤立をリアルに描くNHKドラマが注目されている。だがそこには違和感も……。コラムニスト・オバタカズユキ氏が紹介する。

 * * *
 面白いというのとは違う。さほど感動的とも思わない。ただ、気になる。気になるため、毎週見逃すわけにいかなくなっているのが、火曜の夜10時から放送中のNHKドラマ「サイレント・プア」だ。

「コミュニティソーシャルワーカー。制度の狭間で救われずに苦しむ孤立や貧困、その声にもならないSOSを見つけ出し、地域で支える仕組みをつくる仕事です」

 ドラマは毎回、主演の深田恭子によるゆったりとした口調のナレーションから始まる。深田の演じる里美涼は、東京スカイツリーが間近に見える、「江墨区」の社会福祉協議会(社協)地域福祉課でコミュニティソーシャルワーカー(CSW)として働いている。

 社協は国、都道府県、市区町村単位で組織されている社会福祉法人で、行政や保健・医療・教育など関係機関と連携し、「福祉のまちづくり」を目指したさまざまな活動を行う。長い歴史を持ち、全国をカバーする組織だが、地域ボランティアでもしていないと、知らない人のほうが多いかもしれない。

 しかも、深田恭子のナレーションで説明されているCSWは、福祉の世界でもここ最近になって注目が集まりつつある、という新しい役割だ。大阪府の豊中市社会福祉協議会の活動が有名で、ドラマもそれをモデルにしたそうだが、一般的な知名度はほぼゼロだろう。

 そんな地味で知られざる仕事を、よく連続ドラマの題材にしたものだ。視聴率の観点からしたら、企画書をつくる前のアイデア段階でボツだったはず。それをさすがはNHKだ。民放にはマネのできない好企画である。

 ただ、ドラマの中身については、正直、微妙だ。とりあげる問題や、その現場の描写はいい。どすんとくる。かなりリアルである。

 4月8日に放送された第1話は、息子を亡くした一人暮らしの老婦人が、現実を受け入れられずに、ゴミ屋敷の主になってしまっている問題。立派な栗の木のある庭付き一戸建てを埋め尽くす、ゴミ袋の山に目を見張った。

 第2話は、アルコール依存症の父と寝たきりの母、そしてひきこもりの弟の住む狭いアパートに、幼い娘を連れて嫁ぎ先から戻ってきた腎不全の女性、という多重問題家族。そこまで問題が重なるものか、と驚いたが、人生の歯車が1つか2つ外れたら、こうなっちゃうのかもしれない。「人間の弱さ」がていねいに描かれていた。

 ホームレス問題を扱った第3話も、名優・大地康夫が、中年男性の人生が行き詰る様を繊細に演じて、見る者を引きこんだ。第4話はレギュラーの坂井真紀が演じる民生委員の母が、孫を連れたまま徘徊で行方不明になる、という若年性認知症の問題。母役は、これまた渋い名優の左時枝。坂井、左の母子間にある緊張感がハンパなく、超高齢化社会の現実を思い知らされた。

 第5話は、大学受験を2浪で失敗して以来、30年間ひきこもりを続けている元銀行マンの自治会長の息子の問題。たしかに、「ひきこもり」が騒がれてから、それだけの年月は経っている。もう若者だけの問題ではない。

 5月13日放送の第6話は、日本人の夫に捨てられた、フィリピン人とその息子の滞日外国人問題。フィリピン人の母は水商売ではなく、弁当工場で超長時間労働をしている設定だ。徹夜帰りでマットレスに倒れ込む姿が、将来に増えるかもしれない「移民問題」の難しさを語る。

 と、まあ、エッセンスだけ抜き出すと、ひたすら地味で暗くて重い。そうなのだが、それらの問題をリアルに見てしまうと、「これは、放っておけないでしょ」という気持ちになる。自分のまわりでも、なにかしら思い当たる節がある問題ばかりだし、「見なかったこと知らなかったことにするのは、違うでしょ」と思わされる。

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン