国際情報

露クリミア侵攻に手口学び中国船がベトナム巡視船に体当たり

 中国の船がベトナムの巡視船に体当たりした。これは、けっして暴走ではない。アジアの海洋支配を目指す中国のしたたかな戦略なのだ。

 事の本質は南シナ海だけを眺めていては理解できない。中国はロシアのクリミア侵攻から手口と教訓を学んでいる。それと米国である。

 ロシアの侵攻について、私は当初から「やがて中国に伝染する」と指摘してきた。ロシアが断行した「力による現状変更」は、実は中国のほうが先輩だ。中国は1995年に南シナ海でミスチーフ環礁の実効支配に乗り出している。

 ロシアが半島を丸ごと奪取できるなら、中国は「オレたちだって」と思ったに違いない。中国はロシアに学んだ点が少なくとも3つある。

 第1は「自分たちに甘い国」を狙った。ベトナムと中国はともに共産党の一党独裁である。政治レベルでの交流も深く、昨年はトンキン湾で石油・天然ガスの共同探査にも合意していた。ベトナムにしてみれば「それなのに、なぜ」と思っただろう。

 だが、だからこそベトナムなのだ。「中国に近い」ということは「米国に遠い」。中国と領海をめぐって対峙している国はフィリピンもマレーシアもブルネイもある。

 なかでもフィリピンはオバマ大統領のアジア歴訪で新たに米比軍事協定を結んだばかりだ。もしも中国がフィリピンに手を伸ばせば、米国が黙っていない。オバマはマレーシアも訪れている。ここはロシアにとってのクリミアのように、あえて自分に近い国を狙って米国の出方を見る作戦ではないか。

 第2に、中国は体当たりの事実を否定している。これはクリミアに侵攻した黒覆面集団がロシアの武装勢力だったにもかかわらず、ロシアが「現地の自警団だ」とシラを切ったのとまったく同じだ。どんなに明々白々のだろうと、時間稼ぎになる。

 中国も水掛け論のごたごたに持ち込んでしまえば、その間に既成事実化が図れると踏んでいるはずだ。米国も欧州もウクライナ情勢で手一杯で「強腰で介入してこられない」という計算もある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン