国内

人口減対策に「日本版グリーンカード制」 大前研一氏が提案

 人口減少が将来的に見込まれる日本では、「移民受け入れ」の議論が発生している。移民はどんな影響を日本経済に与えるのか。20年以上前から「移民は不可欠になる」と提言してきた大前研一氏が指摘する。

* * *
 人口が減ってくると建設労働者や漁業者など厳しい仕事の現場は人材確保が難しくなっていくので、この領域に今後は外国人労働者を年間30万人規模で受け入れなければ立ち行かなくなると思う。とはいえ「人手が足りないからどんどん入れましょう」では、言葉や習慣、文化などが理解できないまま日本で働き、生活することになって軋轢やトラブルを生む懸念がある。

 だから、たとえば日本で働きたい外国人で、母国でしかるべき教育を受けた人材に関しては、政府が費用を負担して日本の学校で2年間、我が国の法律や言葉、社会慣習などの基礎を学んでもらう。

 そして卒業試験の結果、問題なく生活できると判定されたら「日本版グリーンカード(国籍がなくても永住することができる権利およびその資格証明書)」を発行して労働市場に出てもらえばよいと思う。これは他の国に例がない仕組みであり、外国人労働者の居住地のスラム化を防ぐ有効な手段となる。日本が導入に成功すれば、世界から大いに評価されるだろう。

 内閣府は「年間20万人」の移民受け入れ試算を出したが、それが明らかになってから、とくに若い保守層の間では「移民を入れたら国の統一性がなくなる」「中国人が増えて社会が不安定になる」という危惧が表明されている。政府・与党内でも「治安が悪くなる」「賃金水準が下がる」として移民受け入れに慎重な意見が少なくない。

 彼らは彼らで真面目に自分の国のことを考え、声を上げているのだろう。かつて日本で60年・70年安保闘争を繰り広げた学生も(今では「若気の至り」と頭をかいている人ばかりだが)、当時は真剣に国の将来を憂えた純粋な若者たちだった。

 中国と台湾がいっそうの市場開放に向けて昨年調印した「サービス貿易協定」に反対し、4月に台湾で立法院(国会)を占拠した学生たちもそうだろう。彼らの思いは理解できるし、全く悪いことではない。

 その愛国心・憂国心をもとに、もう少し長期的な視座に立って日本の将来を見ると、この国のためには移民はいずれ何らかの形で受け入れざるを得ないという現実を直視できるようになると思う。

「愛国者は移民の受け入れに反対すべき」「移民政策を進めるのは反日的」という足下の二元論では問題は解決しない。「右翼」「左翼」というレッテルに惑わされることなく、この国の未来を担う人材の量と質の問題を真剣に考えるべき時が来ている。

※SAPIO2014年6月号

関連キーワード

トピックス

長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
ファッションの面でも注目を集めている愛子さま(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《公務でのご活躍続く》愛子さまのファッションに感じられる“母・雅子さまへのあこがれ”  フェミニン要素で“らしさ”もプラス
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン