丸い円盤型の機械が部屋を歩き回り、掃除をするお掃除ロボットといえば米国アイロボット社の「ルンバ」を思い浮かべる人が多いだろう。今年3月、吸引力が5倍に進化したロボット掃除機の開発に、日本人の意見が反映されていた背景について、作家の山下柚実氏が報告する。
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米国アイロボット社のロボット掃除機『ルンバ』が日本に本格投入されたのは10年前、2004年のことだった。
円盤のような機械が部屋を動き回り、人間よりもきれいに掃除してくれるという。しかし、素直には信じられない消費者は多かった。
電動ちりとり? オモシロ家電? 本当にきれいになるのか? 初めて見たロボット掃除機に対して、冷ややかな声が囁かれた。
それが今や出荷数は右肩上がり。7年かけて35万台を出荷した後は一気に売れ行きが加速し、2012年に60万台、2013年にはいよいよ累計100万台を突破し、堂々たるヒット商品に育った。
そしてこの3月、吸引力を大幅アップした新タイプが発売され、人気に拍車をかけている。
ロボット掃除機市場においてルンバのシェアは約7割とダントツ。
「吸引システム以外にも真似のできない技術が搭載されています」とアイロボット社日本総代理店、セールス・オンデマンド社取締役の池田明広氏(49)。例えば複数の部屋を移動する「お部屋ナビ」。あるいは赤外線によって見えない壁を作り出し、入らない場所を設定できる「バーチャルウォール」。
こうした高機能のポイントは、「動き」にある。
「アイロボット社は米国政府から地雷除去ロボットの開発を受託してきた専門企業です。試行錯誤しながらルートを探索したり、障害物を避けて最適ルートを考えたりといった高度なセンサー技術・人工知能技術を蓄積してきました。それを家の中の作業とカップリングさせた結果、ルンバが生まれたのです」