国際司法裁判所(ICJ)が「南極海における日本の捕鯨中止命令」を出したのは3月末のこと。環境保護団体や反捕鯨団体の完勝に終わったが、彼らは本当に“正義の味方”なのだろうか。
2010年、南極海での日本の調査捕鯨中止を求め提訴に踏み切ったのは「反捕鯨国」の筆頭格、オーストラリアだった。
同国は「日本の調査捕鯨は商業捕鯨の隠れ蓑だ」と訴え、判事の過半数(16名中10名)を反捕鯨国出身者が占めるICJもこれを支持した。日本政府は判決に従う意向を明らかにしたが、すべての調査捕鯨がなくなるわけではなく、北西太平洋では今年度も継続される。
もちろんそれを反捕鯨団体が看過するはずはない。厄介なのは、2005年から南極海での日本の調査捕鯨を妨害し、過激な妨害活動でその名を世界に知らしめた「シー・シェパード(SS)」の存在だ。
カナダ生まれの創設者、ポール・ワトソン氏(63)は国際環境保護団体「グリーンピース(GP)」の元メンバーで、1977年にSSの前身となる「アースフォース」を結成。以後、捕鯨国のノルウェーやアイスランド、デンマークなどを舞台に捕鯨船への体当たり、侵入・撃沈などを繰り返し、幾度も各国治安当局に逮捕・投獄された経歴を持つ。
同氏は当初、GPとともに日本の捕鯨妨害活動を展開していたが、年々、行動をエスカレートさせていった。捕獲調査を実施する一般財団法人日本鯨類研究所参事・西脇茂利氏が振り返る。
「それまでもGPによる船体接触などはありましたが、彼らは『日本の調査捕鯨船に抗議した』というキャンペーンのアリバイ作りが主目的のようで、無理はしなかった。
しかし、後から参戦したSSはより危険かつ執拗な調査妨害を繰り返しました。高速ボートで調査母船に近づき、危険物の酪酸入りのガラス瓶を投擲したり、船員に向かってレーザーや照明弾を水平打ちしたりしたこともあります」
近年は日本の捕獲調査船に海上保安官が警乗しているが、SSの攻撃を完全に防ぐことは難しいという。
「現状では、放水やLRAD(長距離音響発生装置)による妨害行為への抑制と警告が精一杯です」(前出・西脇氏)
産経新聞モスクワ支局長で『シー・シェパードの正体』の著者、佐々木正明氏が語る。
「SSの捕鯨妨害船クルーの多くは20~30代のボランティアです。マスメディアやHPを通じてSSの活動を知り、共感した者たちが応募してきます。そのため、操船技術などない素人が多い。シーズンごとに選ばれ、世界10か国以上の出身者から構成されます。
新人クルーはワトソンやベテランクルーに連れられ航海に出ます。その間、長い時には数か月にわたって延々と反捕鯨の重要性を説かれ、捕鯨国への憎悪を刷り込まれます」
※SAPIO2014年6月号