ビジネス

大手ビールメーカー首脳「来年増税は既定路線」とあきらめ顔

 サッポロビールによるヒット商品『極ZERO(ゼロ)』販売停止は大きな驚きをもって世間に受け止められた。プリン体ゼロ、糖質ゼロなのに「第3のビール」だったため、お買い得な庶民の味方として人気を集めていた商品の突然の販売停止の背景には、財務省・国税庁による「大増税計画」があった。ジャーナリストの永井隆氏がレポートする。

 * * *
 プリン体、糖質ともにゼロの第3のビールとして人気を集めていたサッポロビールの『極ゼロ』販売停止が発表された。税法上、第3のビールに該当しなくなる怖れがあるためと理由が明らかにされた。財務省幹部は6月上旬、記者らを前に『極ゼロ』について聞かれ、こう嘯(うそぶ)いた。

「だから酒税はシンプルにすべきなんだ」

 この一言の意味は大きい。まさに『極ゼロ』が増税の地ならしに利用されつつある発言なのだ。

 ビール系飲料だけでも極めて複雑な税体系がある(ビール系とは別に清酒やウイスキー、ブランデーなどは独自の規定がある)。それを「シンプルにする」――つまりビール系(及び税法上同じ分類の缶チューハイやハイボール)の税制は一本化するということだ。もちろん、彼らが安いほうに合わせるわけがない。一番高い通常のビールの税体系に一本化するのが財務省の長年の悲願なのである。

 布石はいくつもあった。

 2003年5月、当時大ブームになっていた発泡酒が増税され、10円ほど値上げされた。当時の国税庁酒税課長は、国税審議会の場でこう語っている。

「ビールと発泡酒の種類間のいわゆる税率の格差というものをできる限り是正していこうという1つの方向がございまして……」

 格差是正といってもビールの税金を下げるのではなく発泡酒を増税したわけだ。

 さらに2006年改正では、ビールが1缶あたり0.7円だけ減税された一方で、シェアを増していた第3のビールが同3.8円増税された。やはり庶民の味方が狙い撃ちされた。それで終わりではない。2012年の税制改正大綱ではこんな巧妙な言い回しで大増税の方針が記された。

〈酒税については、酒類の致酔性や課税の公平性等の観点を踏まえ、類似の酒類についてアルコール度数に着目した税制とする方向で引き続き検討〉

 同じくらい酔っ払う同じ度数の酒なら、税も同額にすべきということだ。するとどうなるか。店頭価格140円前後で販売されている第3のビールは、単純計算で50円ほど高くなり、ほとんど通常のビールとの価格差はなくなる。1日1缶飲めば、年間2万円近くの増税だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン