国内

姫路城「平成の大修理」が最終段階 担当者が困難な作業語る

五重屋根のほぼ全体が見られるようになった姫路城大天守

 複雑に組まれた鉄骨の中から、化粧直しが施された大天守の五重屋根が姿を現わした。真っ白に塗り替えられた外壁は初夏の日差しに照らされ、まさに「白鷺城」の名にふさわしい輝きを城下の姫路市街に放っている。

 2009年に始まった国宝にして世界文化遺産でもある姫路城の大天守の修復工事は「平成の大修理」と呼ばれる。1609(慶長14)年に徳川家康の娘婿・池田輝政によって築かれた大天守は、400年以上にわたって何度も修復が施され、最近では1956年から64年にかけての「昭和の大修理」で、大天守を全面解体して再構築する工事が行なわれた。そして今回の「平成の大修理」では、屋根瓦の全面葺き替えと漆喰の塗り替えが中心となった。

 日進月歩の建築技術を考えれば簡単な工事にも見えるが、“相手”は国宝にして世界文化遺産。そして「難攻不落の名城」といわれた複雑な造りも作業の大きな壁となって立ちはだかる。その“攻城戦”に挑んだのが、鹿島建設を中心とする「姫路城大天守保存修理JV」だった。総指揮を執った鹿島建設の野崎信雄・総合所長が語る。

「国宝ですから建物に傷ひとつつけられません。敷地も含めて特別史跡なので、素屋根(大天守を風雨から守り、工事の足場としても機能する)を組む際に地面に杭を打つことも、また、消防法により火気を使用する溶接作業もできない。さらに大天守の周囲を小天守や渡櫓が複雑に取り囲む構造のため、素屋根の建設は困難を極めました」

 作業効率と事故防止のため、素屋根組み立てと解体を各ツールを使いながらシミュレーションを行ない、素屋根の鉄骨と城の屋根瓦や壁との間はわずか10cm。それでいて、鉄骨は屋根や城壁に接触しない。その難解なパズルに悪戦苦闘した末に、瓦や壁の修復工事が行なわれた。

 そしていよいよ、「平成の大修理」は最終段階を迎えた。新しい大天守を目の当たりにすると、すでに作業は山を越えたようにも思えるが、野崎総合所長は「最後まで油断できない」と気を引き締める。

「素屋根の建設時から解体手順は想定していますが、解体時に鉄骨やボルトが落下して城を傷つけることのないように細心の注意が必要です。そのため、風や雨が強い時には作業を中止するなど、慎重な判断を心がけています。また、真っ白に甦った城を汚さぬよう、解体時に飛散する埃の対策として事前に清掃しながらの作業になります。素屋根を解体してしまうと、今後数十年は手を加えることができないのですから」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト