その中でもとりわけ残酷なのが、農民一家がベトコンに間違われ韓国兵の機銃掃射を受けるシーンだ。幼い子供や老人が銃弾に倒れ、その傍らで子供の両親と思われる男女が泣き叫ぶ。
韓国兵は民間人を殺害したことに気づき動揺するが、「どうせ殺すんだ。(この場で)殺せ!」という上官の命令で生き残った農民をサバイバルナイフでめった刺しにすると、武功として耳を削ぎ落とした。
かつてベトナムを取材したノンフィクション作家の野村進・拓殖大学国際学部教授は、映画のシーンと同様の体験をした人々から韓国軍の残虐性を物語る証言を得ている。
「ベトナム南部のニンホア県ラクアン村出身の男性は12歳の時に韓国軍の急襲を受け、両親と3人の妹を亡くしました。村にやってきた韓国軍は大人子供関係なく、いきなり銃を乱射したそうです。
我々の話を近くで聞いていた老人は、『(韓国兵は)死んだ人間の耳を切り落とした。鼻をもがれた者も、首を狩られた者もいる。そんなことは、どこでもあった』と話していました」
映画はベトナムでの韓国軍の蛮行をありのままに描いていたというわけだ。枯葉剤戦友会は、この作品を手がけた監督の鄭智泳氏に対し執拗な抗議を重ねたという。鄭氏は映画の公開に前後して、複数のメディアに対し次のように語っている。
「ベトナム戦争は韓国現代史における恥部だ。しかし、若い世代に偽りの歴史を教えることはできない。韓国のベトナム派兵を知らない若者すらいる。
この映画は史実を再検証するために作った。戦友会から『なぜ韓国の暗部を掘り起こすのか』という抗議もあったが、全部史実に基づいたものなので無視した」
※SAPIO2014年8月号