ビジネス

東海道新幹線の思い出を募集 北尾トロ氏は「食堂車」を述懐

新幹線の食堂車は憧れの席だった

 東海道新幹線は今年で開業50年を迎える。日本の高度成長の象徴ともいえる0系や100系の新幹線には鉄道ファンのみならず、特別なシンパシーを抱く人が少なくない。ノンフィクションライターの北尾トロ氏は、1974年に登場した「食堂車」について述懐した。

 * * *
 旅の愉しみと言えば「食」である。そして新幹線と食について考えるとき、どうしても外せないのが食堂車の存在だと、我々の意見は一致する。洒落たレストランで食事しながら旅をするなんて、それまでの常識にはまったくなかったのだ。

 食堂車の登場は1974年。セブン-イレブンの第1号店(東京・豊洲)がオープンした年でもある。ぼくが食堂車への憧れを募らせたのは、それから少し時間が経った70年代後半。大学生になり、実家のある九州へ帰省するたびに新幹線を利用するようになっていた。食堂車と言えば、いまでも忘れられないのが、通路からチラッと見えた、初老の紳士が腰かけたテーブルの上の光景だ。ビーフシチューとパン、サラダもあったろうか。その横にビールの小瓶が置かれているのが、旅慣れた大人みたいでカッコ良かった。

「わかる、わかる。小瓶なのが粋なんだよね。で、真似したいと思うんだけど、若造にとってビーフシチューは高級で手が出なかった」

 カンゴロー(フォトグラファー)も、食堂車に憧れを抱いた一人だったらしい。そうそう、哀しいかな、金のない学生にはカレーが精いっぱいだったなあ。

「そのカレーが欧風でね。食後にコーヒーを頼んで粘ったもんだ」

 帰省ラッシュの年末などは自由席が大混雑するので、なるべく食堂車にいる時間を長引かせたかったのだ。特別な乗り物だった新幹線が、長距離移動に欠かせない乗り物になったのが、この時代だったかもしれない。

「0系や100系の食堂車に、いまも会える場所が『リニア・鉄道館』。名古屋ですが行ってみますか?」

 おっさん隊の事情通・ヒラカツ(編集者)に引率され、カンゴローと3人で出かけることにした。

 歴代の新幹線を始めとする栄光の車両が勢ぞろいする『リニア・鉄道館』は、平日にもかかわらず親子連れでにぎわっていた。すべての車両はピカピカに磨き上げられ、完璧な状態。鉄道マニアではない我々でさえ興奮が隠しきれない。もう、食堂車なんかなめるように見て回るのだ。

「懐かしいなんてもんじゃないね。意気込んでやってきたら通路に列ができていて、仕方なくビュフェで食べる寂しさよ」

「車窓側に空席があるとうれしかったりね。あの辺の席が理想的だった」

関連キーワード

トピックス

俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン