国際情報

エボラ出血熱 日本上陸の最大のリスクは中国人のコウモリ食

 WHO(世界保健機関)によると西アフリカでのエボラ出血熱による死者は1069人、感染が確認ないし疑われる患者は1975人に達した(8月11日時点)。治療法のないこの感染症の大流行に、日本の近隣諸国で最も敏感に反応しているのが中国だ。

 感染の拡大が確認されると、中国政府はいち早く3000万元(約5億円)相当の緊急支援物資を送ることを決定。あわせて専門家チームを現地に派遣し、最前線で対策に当たらせている。11日にはシエラレオネで感染者を手当てしていた中国人医師が、エボラ出血熱感染の疑いがあるため隔離されていることが明らかになった。中国が対策に躍起になるのには理由がある。

 中国政府商務部によれば、エボラ出血熱によって多数の死者が確認されているギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカ3か国には、およそ2万人もの中国人が居住しているというのだ。現地に在留する日本人が100人に満たない(2013年度、海外在留邦人数統計)ことを考えれば驚くべき数字である。中国問題に詳しいジャーナリストの富坂聰氏の解説。

「西アフリカに住む中国人の多くは現場労働者で、政府の統計に引っかからない者も含めればその数は2万人よりずっと多い可能性もあります。中国政府はアフリカ諸国に対して盛んにODA(政府開発援助)を行なっている。中国の場合はお金を出すだけでなく、援助資金を使った建設事業などを行なう際に自国から労働者を連れていくことが多い。また、西アフリカは資源が豊富なので、エネルギーや鉄鋼関連の中国系企業も多い」

 中国政府が敏感な反応を見せる理由は他にもある。「感染源」と「ある食習慣」の存在だ。エボラ出血熱の感染源と考えられているのが「コウモリ」である。感染症の専門家で元小 市保健所所長の外岡(とのおか)立人氏が解説する。

「コウモリはエボラウイルスの自然宿主であり、西アフリカにはコウモリを食べる習慣がある。過去に流行した際も、コウモリから人に感染したと考えられています。米紙ニューヨーク・タイムズが報じたところでは、WHOは今回の流行について昨年12月にギニア奥地の小さな村に住む2歳の子供がコウモリと接触して感染したのが発端だとみているようです」

 エボラウイルスは他のウイルスと同様、加熱処理すれば死滅するが、「捕獲した段階や調理の際に感染する危険性が高い」と外岡氏は指摘する。

 そして西アフリカ同様に、コウモリを食べる文化が存在するのが中国である。中国本土にある広東料理店店主が語る。

「広東省周辺には野生動物を一般的な家庭料理として食べる習慣があり、市場でも食用コウモリが売られています。一部では高級料理の食材として利用され、クコの実や生姜と一緒に丸ごと煮込んでスープにしたりします。スープに浸ったコウモリの肉も食べる。繊維が細く、味はさっぱりとしていて鶏肉に近いですよ」

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン