中国では2002~03年にSARS(新型肺炎)が大流行したが、そのウイルスの自然宿主もコウモリだったとする説が有力になっている。SARS流行後、広東省では「野生動物の食用禁止」を地方政府が呼びかけるなどして「コウモリ食」を止めさせる取り組みがあったが、「近年では以前の習慣が当たり前のように復活している」(同前)という。
そうした中国人の食習慣は、もともとコウモリ食の文化がある西アフリカに住む中国人にとっては今も日常と考えられるし、それによって感染リスクが高まるとの指摘もある。前出・富坂氏の話。
「中国人は海外進出しても現地に溶け込もうとせず、自分たちの食生活や生活習慣を変えようとしない。コウモリなどの野生動物を食べる習慣のある人たちは、やはり現地で調達するでしょう。
その意味では、西アフリカで中国人がエボラ出血熱に感染する危険性は十分ある。中国本土では感染症に対する検疫体制は整っていますが、潜伏期間がある以上は完全に防ぎきれるものではありません。もし1人でも入ってきたら、感染拡大をしばらく止められないでしょう」
中国本土への感染拡大があるとすれば、エボラ出血熱の日本上陸リスクは一気に高くなる。日本人の往来がほとんどないはるか遠い西アフリカで流行するのと、年間100万人単位で渡航者の行き来がある中国にやってくるのでは、状況が全く変わってくる。
懸念材料となるのが中国政府の隠蔽体質だ。自国内での感染症拡大を隠し、「嘘の安全宣言」をしたことさえある。現在、厚生労働省はエボラ出血熱に対して次のような防疫体制を取っている。
「ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの4か国から入国した人については、空港の検疫ブースで『申し出てください』と、ポスターでの告知や声がけをして、健康状態などを確認します。そこでもし何らかの症状があったり、現地で動物に触れた、感染者の近くにいた場合にはさらに詳しく症状を診て、疑いがあれば本人に説明した上で隔離し、感染症指定医療機関に搬送します」(健康局結核感染症課)
※週刊ポスト2014年8月29日号