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女性のための官能小説「ジョジョカン」 発想の転換がヒットの背景

 女性による、女性のための官能──いわゆる「ジョジョカン」市場で旋風を巻き起こしているのが、フルール文庫(KADOKAWA)だ。創刊は2013年9月13日で、間もなく1周年を迎える。月1回ペースで刊行され、これまで文庫30点等がリリースされ、電子書籍版も好評だという。累計35万部、1作品平均で1万部近くの数字を弾き出している。
 
「ジョジョカン」の名付け親、波多野公美編集長が語る。
 
「フルールはフランス語で『花』の意味です。女性にとって美しい花は、暮らしを彩るサプリメント。フルール文庫のエロティックな恋の物語も、大人の女性が心の疲れを癒す、ちょっとエッチなサプリなんです」
 
 波多野氏は編集キャリア15年。本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』や女性誌で辣腕をふるってきた。
 
「転機になったのが2010年。百人一首の歌人たちが和歌で描いた男女の世界を、コミックと大胆な現代語訳で表現した『超訳百人一首 うた恋い。』を企画しました。これがシリーズ85万部の大ヒットになったんです」
 
 同作品は、大人の女性向け恋愛コンテンツへのニーズが大きいことを証明してみせた。波多野編集長は、恋愛と一心同体のエロティックな分野にも女性マーケットが存在することを確信する。それらが「ジョジョカン」への導火線となった。
 
「女性向けのエロスを内包したコンテンツには、BL(ボーイズラブ)という、性の垣根を超えた男性同士の純愛モノがあって、30年を超える歴史を誇っています。さらには、TL(ティーンズラブ)も根強い人気で、こちらは、男女の恋愛ストーリーにエッチな要素が加わった感じでしょうか」
 
 フルール文庫は、ボーイズラブ主体の「ブルーライン」と、男女の濃密な恋愛を描く「ルージュライン」の二本柱を打ち立てた。とはいえ、女性向け官能小説のジャンルは群雄割拠の状況でもあった。
 
「海外翻訳ものの老舗ハーレクインロマンスを筆頭に、ティアラ文庫やシフォン文庫、マリーローズ文庫など10を超える競合相手がいました」
 
 そこで、フルール文庫は従来路線との差別化を目指した。
 
「官能の世界は圧倒的に男性主導で、女性のためのものでさえ“女性による”という部分が徹底されていなかったといえます。でも、男性と女性の官能ファンタジーは真逆。フルール文庫は作家、編集者、営業まで一貫して女性のみで作品を送り出しているところが最先端だと思っています」

※週刊ポスト2014年9月5日号

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